管理系部門がIPO準備でやることPart.21 -人事編⑨-
- 長嶋 邦英

- 1月11日
- 読了時間: 7分
「管理系部門がIPO準備でやること」について、今回も引き続き人事編です。

ここ数回、以下の記事でIPO準備期の人事の役割についてご紹介しながら皆さんと一緒に考えております。これまでの人事編は以下のとおりです。
なぜここまでIPO準備期の会社での人事を取り上げているかというと、他の会社の人事の業務と比べて少々違う点があること。また、業務それぞれを個別にみると、他の会社の人事の業務とは明らかに違うかたちの活動を行い、その業務量は増加するからです。
今回の記事では、人材教育のうちガバナンス教育について皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
IPO準備期の人材教育で心掛けたいこと③
前回の記事では、IPO準備期の会社の人材教育は単に「IPOのための準備」だけでなく、上場会社としての「あるべき姿」になるための人材教育となることとコンプライアンス教育についてご紹介しました。これはIPO(Initial Public Offering・新規公開株式)はその会社が今後5年、10年、またはそれ以上の年月を発展的成長を伴って続いていく中での、幾つかあるうちのひとつのマイルストーン(道標)です。会社の人材教育は、そのマイルストーンを辿るために必要な上場会社の従業員としての立ち居振る舞い、所作、言動等を含めたコンプライアンス教育、ガバナンス教育が必要であり、大切になります。今回はガバナンス教育について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
コンプライアンス教育は文字通り法令遵守(法令に限らず法令以外のルール、倫理、規範も含みます)に関する教育ですので、皆さんもすぐにご理解いただけたかと思います。もうひとつのガバナンス教育は、少々難しくなります。まずはガバナンスについて、「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」(東京証券取引所2004年03月公表、2009年12月改定)に次のように説明されています。
コーポレート・ガバナンスは企業統治と訳され、一般に企業活動を律する枠組みのことを意味する。 およそ上場会社の企業活動は、収益を上げ、株主にとっての企業価値を高めることを主要な目的として行われるが、上場会社がそうした成果を継続的に挙げ続けることを期待するためには、企業活動を律する枠組み、即ちコーポレート・ガバナンスを通じて経営をそのように動機付け、あるいは監視することが欠かせない。 すなわち、上場会社にとってコーポレート・ガバナンスが有効に機能することは、継続的に企業価値を高めていくための極めて基本的な要請であり、そのような環境を整えることがコーポレート・ガバナンスの基本的な目的である。
(出典:「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」1ページ)
これを踏まえると、ガバナンス教育とは、会社が継続的に企業価値を高める企業活動のために、その企業活動を律する枠組みとこれを有効に機能するための内容と環境を整えて、これを従業員の皆さんに教育することだと考えます。さきほどガバナンス教育が少々難しいと言ったのは、ガバナンス教育はこのようにひと言で言えても具体的な内容がうまく説明できないところがあるからです。ガバナンス教育を実施するには、まずは「企業活動を律する枠組みとこれを有効に機能するための内容と環境」を整えなければなりませんし、この内容と環境も一朝一夕に整えることはかなり難しいです。なぜなら、その内容と環境はその会社の経営方針や経営者層のお考えはもとよりその会社の社風や習慣等も大きく影響して形成されていくもので、極端なことを言えばIPOのためだけではありません。IPOするにしてもしないにしても、会社が継続し成長すればガバナンス教育もこれに応じてその内容を変えていかなければならず、単発ではなく繰り返し(少なくとも年1回の継続開催)実施しなければなりません。この点がガバナンス教育の難しいところだと考えます。
IPO準備期の人材教育で心掛けたいこと④
少しピンポイントな点を挙げてお話しします。 「企業活動を律する枠組み」にはガバナンスとコンプライアンス(法令遵守)の2つの要素があります。ここで「ガバナンス教育なのだから、企業活動を律する枠組みを説明する際もガバナンスのことだけを話せば良い」と考えるかもしれませんが、ここは注意が必要です。企業活動を律する枠組みにはガバナンスとコンプライアンス(法令遵守)の2つの要素がありますが、内容的にハッキリと区分できるものではありません。その枠組みを分解すると①法令、②法令以外のルール、③倫理・規範に分けられ、コンプライアンスはこれを遵守することですが、これに対しガバナンスは「どのように遵守するのか」という会社のポリシー(方針、基本原則)と姿勢の部分となります。会社のガバナンスはその会社のポリシーと姿勢によって形成され、さらにこれによって会社のコンプライアンス/ガバナンス体制が構築され、それらが行動に表れます。例えば規程の内容は法令の定めに基づいた条文でありつつも、これを「どのように遵守するのか」はそれぞれの会社のポリシーと姿勢によってだいぶ異なります。ガバナンス教育は皆さんの会社が考えるコンプライアンスをどのように実施し実現するのかというポリシーと姿勢を定めてから実施する必要があり、会社のポリシーと姿勢が定まっていない限りは実施することが難しいということになります。一般的にガバナンス教育で、会社の機関(取締役会、監査役会、経営会議等)や業務分掌、職務権限等について説明されると思いますが、これらも会社のポリシーと姿勢があるからこそ会社の機関があり業務分掌や職務権限が定められているでしょう。もしガバナンス教育の際に従業員から「当社はなぜ経営会議の出席者がこの人選なのか?」や「なぜそれぞれの部門があるのか?/無いのか?」との質問があったとき、これを一般的な説明ではなく会社のポリシーと姿勢を踏まえた説明をすることができますか?このためにも、会社のポリシーと姿勢について社内でしっかりと検討して定めてからガバナンス教育を実施することをお勧めします。
さて、これまで会社の内側からガバナンス教育について考えてみましたが、今度はその会社の外側からガバナンス教育を少しだけ考えてみます。
さきほどガバナンス教育を実施する前に会社のポリシーと姿勢について社内でしっかりと検討して定めることをお勧めしましたが、それは会社の外側にいるステークホルダー(株主、顧客様、取引先様など)は大変興味深くみていると思うからです。大手の上場会社の中にはCSR(企業の社会的責任)活動の一環としてその会社のガバナンスに関する考え方や社内への周知及び浸透状況を報告しているところもあります。(※トヨタ自動車株式会社ではESG・社会貢献の中で公表しています。)ガバナンスは会社・経営者層だけのものではありません。その会社の従業員全員に深く浸透することによって、その会社の信頼性、成長性等の「企業価値」が形成されると考えます。ですから、最初のお話しに戻りますが、ガバナンス教育は会社が継続的に企業価値を高める企業活動のためのものであり、会社にとって人材教育は単に「IPOのための準備」だけでなく、上場会社としての「あるべき姿」になるための大切なものであると考えることをお勧めします。
IPO準備期の人材教育で大切なことは、上場会社としての「あるべき姿」になるための人材教育であることです。IPO準備期というほんの一時期のお話しではありません。そしてこの人材教育は内部統制・全社統制(CLC)の統制項目(42項目)の一つに挙げられていますので、しっかりとした人材教育の体制・制度を構築して実施することをお勧めします。
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