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管理系部門がIPO準備でやることPart.16 -人事編④-

  • 執筆者の写真: 長嶋 邦英
    長嶋 邦英
  • 7 日前
  • 読了時間: 7分

 「管理系部門がIPO準備でやること」について、今回も引き続き人事編です。



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 ここ数回(「管理系部門がIPO準備でやること Part.05 - 人事編 -」、「Part.14 - 人事編② - 」、「Part.15 - 人事編③ -」)IPO準備期の人事の役割についてご紹介しながら皆さんと一緒に考えております。繰り返しになりますが、なぜここまでIPO準備期の会社での人事を取り上げているかというと、他の会社の人事の業務と比べて少々違う点があること。また、業務それぞれを個別にみても、他の会社の人事の業務とは明らかに違うかたちの活動を行うからです。今回は前回の労務管理の続きを、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。



IPO準備期の労務管理で心掛けたいこと④

 労務管理は、労働条件や労働環境を整備し管理することが大きな目的であり、実際の業務は労働条件の管理、勤怠管理、給与計算、社会保険手続き、福利厚生制度、労働環境の管理(安全衛生管理)など多岐にわたります。先に挙げた業務を分解すると、2つの要素に分けられます。それは、「法令等の遵守」と「従業員の心身」の2つです。これについては前回の記事ですでにご案内のとおりなのですが、この2つの要素を並行し両立して業務遂行することはとても難しいです。この2つの要素それぞれの角度から、IPO準備期の労務管理で心掛けたいことを考えてみます。


 まずは「法令等の遵守」の角度からIPO準備期の労務管理で心掛けたいことを考えてみます。結論から言いますと、IPO準備期において労務管理は、まず法令等の遵守が重要になります。これは、上場審査で「申請会社及びその企業グループにかかる企業内容、リスク情報等の開示を適切に行うことができる状況にあるか」(東京証券取引所・新規上場ガイドブック(グロース市場編)50ページ)を確認すると明示されていますが、「リスク情報」の中にこの労務管理に関するリスクも含まれます。この点は意外と見逃すポイントです。この点を、特に主幹事証券会社から指摘されるポイントには次のようなものがあります。


  • 労働条件:労働法上の手続漏れ(雇用契約書の必須事項記載漏れ、労働条件通知書の交付漏れなど)

  • 勤怠管理、給与計算:時間外割増賃金(いわゆる「残業代」)の支給漏れ

  • 社会保険:加入漏れ(特にパートタイム従業員等)

  • その他:労働審判・労働基準監督署からの行政指導の有無、安全衛生管理体制 など


 上に挙げたものは、普段から会社が注視していなければいけないリスク情報たちですが、IPO準備期となると「法令等の遵守」の観点から一層厳しく確認されるポイントとなります。

 それにもうひとつ、これは意外と見逃すポイントですが、新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅱの部)の「8.リスク管理及びコンプライアンス体制について」項において、労働審判・労働基準監督署からの行政指導の有無を記述する箇所(日本取引所「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅱの部)記載要領」22ページ)があることです。

8.リスク管理及びコンプライアンス体制について (2)最近3年間及び申請事業年度における法令違反等の状況  最近3年間及び申請事業年度における行政指導・処分等(国税局、税務署及び労働基準監督署からのものも含みます。)、法令違反及び不祥事等(情報漏えいを含みます。)の内容について、また、その後のこれら法令違反に対する対応等を記載してください。

 「新規上場申請のための有価証券報告書」の作成についてはまた改めての機会に皆さんと一緒に考えてみたいと思っております。文字どおり「有価証券報告書」なので、IPO準備のためだけに作成するわけではありません。有価証券報告書は上場し続けている間は開示しなければならない書類で、その内容や書きぶりに会社の姿勢が如実に現れます。ですから初回から十分に内容や書きぶり等を十分に吟味したうえで作成に当たらなければなりません。この点についても、ぜひ記憶に留めていただけたら幸いです。



IPO準備期の労務管理で心掛けたいこと⑤

 次に「従業員の心身」の角度からIPO準備期の労務管理で心掛けたいことを考えてみます。こちらもとても大切なことなのですが、「どのようにしたら良いのか?」という具体的なアイデアをご紹介しにくいことでもあります。なぜなら、IPO準備期の労務管理が「従業員の心身」について心掛けるポイントは、その会社の経営方針、社風、職場環境等となるからです。以前の記事「管理系部門がIPO準備でやることPart.14 -人事編②-」でご紹介しましたが、会社の経営方針、社風、職場環境等は労務管理だけでなく採用においても重要です。もっと広く言えば、IPO前からIPO準備中、またIPO後に至るまでその会社が経営方針、社風、職場環境等をどのように維持し、変化していくのか。このことは会社の経営・事業全体に大きく影響するものです。ですから当然その会社で働く従業員の皆さんにも大きく影響することですので、十分にご注意ください。


 話を戻します。

 「従業員の心身」の角度からIPO準備期の労務管理で心掛けたいことを考えるときの考え方としては、前述にあるように、会社の経営方針、社風、職場環境等が従業員にどのように影響しているのか。その度合いや状況を敏感に察知することだと考えます。察知しやすいのは安全衛生管理です。IPOをお考えの会社の規模は、おそらく従業員が50名以上在籍されていると思いますが、そうすると安全衛生委員会の設置が法的に義務付けられています。(※労働安全衛生法第19条及び労働安全衛生法施行令第9条:常時50人以上の労働者を使用する事業場に設置が義務付けられている組織)この委員会で各部門・職場の労働環境や従業員の状況が報告されますので、「従業員の心身」に関する情報が集約される場が存在します。この安全衛生管理委員会がしっかりと充実した運営が行われていればあまり心配しないで良いのですが、もし、さほどしっかりと運営されていないような状況ですとかなり芳しくありません。「従業員の心身」に関する正確・的確な情報が把握していない/放置されていることは、会社にとっては時限爆弾であると言っても言い過ぎではないでしょう。しっかりとした会社は、そのような情報が些細なものであっても発見された時にすぐに適切な対応・対処を行なっています。この「些細なもの」であることが重要です。なぜなら、些細である時点であれば適切な対応・対処をとることが可能ですが、ハッキリと表面化した時や最悪の場合は恒常化している時は適切な対応・対処をとることが難しくなります。そうなると「従業員の心身」に大きな影響が出てしまいます。このことは、なにもIPO準備期の会社だけが注意しなければならないことではありませんが、IPO準備期の会社の社内の雰囲気はかなり独特であることから、「従業員の心身」に大きな影響のある事象が発生しやすいです。IPO準備で大切なポイントは多くあります。ほとんどのポイントは自力・他力でなんとか対応・対処が可能ですが、IPO準備でこの「従業員の心身」に関するポイントはなんとかなるというものではありません。従業員は生身の人間だからです。いくら今後、未来において技術が向上し、社会が大きく変化しても、会社の業務は機械やAI(Artificial Intelligence)がすべてを担うことはできず、生身の人間である従業員が担うこととなります。従業員の心身に関する社内の変化にいち早く気付き対応・対処するなどして従業員の心身に向き合うことは、IPO準備期の会社にとって最も重要なポイントとなります。ですから、この部分を担う労務管理の皆さんの働きがとても重要となります。具体的なアイデアをご紹介できないのはとても心苦しいのですが、上でご紹介したポイントを踏まえながら会社でご検討いただき、皆さんの会社なりの工夫をしていただけたら素晴らしいです。


 今回もIPO準備期の労務管理で心掛けたいことを皆さんと一緒に考えてみました。人事業務は従業員と向き合う業務です。人事の皆さんの心からの誠意のある不断の努力によって、会社は成長し前進します。IPO準備期の会社にとって人事の皆さんの働きは重要です。

 次回も、もう少しIPO準備期の人事業務について皆さんと一緒に考えてみたいと思います。





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