管理系部門がIPO準備でやることPart.14 -人事編②-
- 長嶋 邦英

- 11月23日
- 読了時間: 7分
「管理系部門がIPO準備でやること」について、以前に人事編をご紹介しましたが、今回は人事編②です。

IPO準備期の重要メンバー(切り札)としての人事担当②
以前2年前に人事編を取り上げましたが、改めて人事の皆さんがIPO準備でやることを一緒に考えてみたいと思います。
前回の記事「管理系部門がIPO準備でやること Part.05 - 人事編 -」では、IPO準備期の人事の役割についてご紹介しました。IPO準備会社での人事業務は他の会社と比べて、例えば役割、社内の雰囲気づくり・心配り等が少々違います。役割としては前回の記事でご紹介したように、通常の人事業務の他にIPO準備中/上場維持を目的とした人材採用や労務管理(勤怠管理を含む)の厳格化、人事考課制度の拡充、人材教育、組織・職務権限等組織制度の確立と徹底など、様々です。これに加え、前回の記事では触れませんでしたが、社内の雰囲気づくり・心配り等があります。
現在IPO準備会社の人事の皆さんは感じていると思いますが、IPO準備している会社内の雰囲気は少々独特です。表現は難しいのですが、「穏やかではない」雰囲気といった感じです。IPO後を見据えて現部門の人員増員や新部門設立とこれに伴う採用や、組織再編に伴う昇降格等を含む人事異動などによって、在籍中の従業員たちの心情は業務に100%打ち込める状態ではありません。IPO準備会社では必ず発生する状態なのですが、その状態を察知して対応策を検討することも人事の業務範囲です。組織再編や人事異動等数々のイベントが発生すれば社内の雰囲気が穏やかではなくなるのも無理はありません。人事の皆さんもその雰囲気に飲まれてしまう又は圧倒されてしまうかもしれませんが、それだけは避けたいところです。また、この社内の雰囲気が穏やかでないことを嫌がる従業員もいらっしゃいます。これによって発生するのは退職者数の増加で、特に社歴の古い方や業務上のコアメンバーによくある傾向です。この傾向によって業務の遅延や従来の業務流れを見直さざるを得ない自体にも発展するかもしれません。これの対応策(社内の雰囲気づくり・心配り等)も人事の業務範囲です。
このように考えると、前回の記事でご紹介した内容はあくまで人事本来の業務を中心にしたものなのですが、IPO準備会社では実は人事の皆さんの力が必要な場面、縁の下の力持ちとしての実力を大いに発揮する場面がとても多いことに気付かされます。
今回の記事では、このような表面には決して出てこない、人事の皆さんの力が必要な場面や縁の下の力持ちとしての実力を大いに発揮する場面をご紹介しながら、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
IPO準備期の採用で心掛けたいこと①
IPO準備期の採用で心掛けたいことは数多くありますが、まずは「どのような目的・方向性を持って採用するのかを見失わないこと」を挙げたいと思います。IPO準備会社では、喉から手が出るほどの気持ちで人材を採用したいところです。人材採用の選考の中で目的・方向性を見失うと、応募された方を片っ端から面接しその中から採用する、というケースが多いです。例えば職歴、保有資格等を重視する採用です。そこで採用された方が会社の社風、職場環境、周囲の従業員等と合えば良いのですが、目的・方向性を脇に置いて職歴、保有資格等を重視して慌てて採用したケースでは、入社後早い時期(6か月〜1年ほど)にギクシャクしてしまうことが多いです。似たようなケースでは、新しく採用された方が部門長・管理職の場合、その方から業務指示を受ける部員・メンバーが離れてしまう傾向が高いことです。特にIPO準備期の採用は意図せずに短期決戦になることが多く、またIPOという特殊な事情があるため、どうしても職歴、保有資格等を重視するあまり当初の「どのような目的・方向性を持って採用するのか」を見失ってしまい、目先に囚われて採用する状況です。会社にとって経営方針、社風、職場環境等はとても大切なものです。それに、それらは経営者たちが培ってきたものだけでなくこれまでその会社に在籍している/していた従業員たちが大切にして培ってきたものです。これをIPO準備期だからと言って台無しにする必要はありません。
会社にとってIPOはマイルストーン(中間地点の距離を表すための標石)であり通過点です。これまで大切に培われてきたものはIPO後も大切に培っていくことをお勧めします。この大切さを理解し育む環境を整えていくのは、人事の皆さんの役割です。IPO準備期でこの環境を崩してしまうきっかけのひとつに採用があります。ぜひ注意深く心掛けることをお勧めします。
IPO準備期の採用で心掛けたいこと②
もうひとつIPO準備期の採用で心掛けたいことは、会社の経営方針、社風、職場環境等に合った採用を重視することを挙げたいと思います。これは前述の①の延長線でもあるのですが、IPO準備にあっては少々特殊なスキルを求められることがあります。代表的なのは、内部監査部門やIR部門の人材です。これは未上場会社にはそもそも無い部門ですし専門性が高い職種でもありますから、もちろん新規採用になります。ここに会社の経営方針、社風、職場環境等に合った採用を重視することは難しいかもしれませんが、敢えてここは会社の経営方針、社風、職場環境等に合った採用を重視することをお勧めします。なぜなら、内部監査部門やIR部門の業務は、その部門単体で業務遂行が成立し得ないからです。もちろんこれらの部門の業務だけでなく、社内の業務はその部門単体では成立し得ません。必ず部門横断・連携が必要になります。そうなると、会社の経営方針、社風、職場環境等に合った採用が望ましいと考えます。具体的には、採用面接時の採用部門の長・他の従業員同席や、新設部門の場合は部門横断・連携が多い先の部門の長の同席などがありますので、ぜひご検討ください。
今回会社の経営方針、社風、職場環境等に合った採用を重視することを挙げた理由は、IPO準備期の社風、職場環境等がとても大切だからです。IPO準備期間中、社風、職場環境等はガラッと変わります。良い方向にも芳しくない方向にもなり得ます。どのような方向になったとしても、株式上場はできます。繰り返しますが、会社にとってIPOはマイルストーンであり通過点です。このことをよく理解している会社は、IPO準備期間中に社風、職場環境等がガラッと変わったとしても、その社風、職場環境等の変化はこれまでのそれらをあたたかく育みさらに豊かに成長させたものにしています。一方、IPOがゴールとなってしまっている会社はIPOすることにこだわってしまったために、違和感のある社風、職場環境等の変化に直面しこれまでのそれらがまったく失われてしまい、社内が混乱することが多いです。また、IPO準備にあっては少々特殊なスキルを求められる職種があるのはもちろんですが、その割合はごくわずかです。ですから、これまで育んできた社風、職場環境等を犠牲にしてまで目先のことに囚われるのは、とてももったいないです。
IPO準備期間を1〜2年程度に設定している会社の場合は採用も時間勝負・短期決戦となります。今後の会社の命運を左右しかねないことになりますので、IPO準備期間は時間的に余裕を持ったかたちを検討することをお勧めします。
今回は、表面には決して出てこない、人事の皆さんの力が必要な場面や縁の下の力持ちとしての実力を大いに発揮する場面をご紹介しながら、皆さんと一緒に考えてみました。このことは、人事業務のテクニックというよりは人事の皆さんの心からの誠意のある不断の努力によるものだと思います。このことへの理解は、人事の皆さんだけでなくすべての職種の皆さんに持っていただきたいと考えた次第です。
次回も、もう少しIPO準備期の人事業務について皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
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