管理系部門がIPO準備でやることPart.19 -人事編⑦-
- 長嶋 邦英

- 12 分前
- 読了時間: 7分
「管理系部門がIPO準備でやること」について、今回も引き続き人事編です。

ここ数回、以下の記事でIPO準備期の人事の役割についてご紹介しながら皆さんと一緒に考えております。これまでの人事編は以下のとおりです。
なぜここまでIPO準備期の会社での人事を取り上げているかというと、他の会社の人事の業務と比べて少々違う点があること。また、業務それぞれを個別にみると、他の会社の人事の業務とは明らかに違うかたちの活動を行い、その業務量は増加するからです。
今回の記事では、かなりピンポイントですが、前回に引き続き給与計算について皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
IPO準備期の給与計算で心掛けたいこと⑤
前回の記事「管理系部門がIPO準備でやることPart.18 -人事編⑥-」では、IPO準備期の会社の給与計算と他の会社の給与計算とではやることが少々違う点のうち、①規程等ルールの整備、②規程等ルールの法令等遵守について、皆さんと一緒に考えてみました。この①②で大切なことは、規程等ルールは法令に限らずその他の規範についても遵守し、それに基づいたルール整備を行う必要があるということです。補足ですが、前回の記事ではその他の規範の例に「会計基準(企業会計基準)」を挙げました。会計基準に基づくという考えは経理部門の皆さんにとってはもちろんのことですが、これは経理部門の皆さんに限ったことではありません。今回のテーマである給与計算の業務を担当する皆さんも、部分的ではありますが理解したうえでその業務を担当していただく必要があります。その他の規範としては、この後で取り上げますが上場会社がやるべきこととしている「決算の早期化」にも給与計算が大きく影響しています。給与計算は法令だけでも数多くの規定があるので大変な業務なのですが、その他の規範も給与計算の業務に大きな影響があることを覚えてください。
さて、その「決算の早期化」ですが、以前の記事「管理系部門がIPO準備でやること Part.02 - 経理編 -」で経理部門としてどのように取り組むのかをご紹介しました。IPO準備期の会社は、主幹事証券会社と監査法人から間違いなく「決算の早期化」の指摘、指導が入ります。これは大きな目的のひとつ「上場会社としての開示義務」を果たすために絶対に必要なことです。これができない場合は、IPOは不可能です。この対策として、一般的には経理業務の人員を増員したり、会計システムの新規導入/入替、経理業務の効率化、などを実施することが多いと思います。ですが、IPOを経験されている皆さんは、さきほど挙げた一般的な対策だけでは「決算の早期化」は難しいことをすでにお気付きだと思います。決算業務は財務諸表に必要な数字を集計するのですが、その「必要な数字」は各部門の各業務において集計されるものです。そこに「決算の早期化」特有の大きな壁が立ちはだかります。その大きな壁の一つに、その各部門の各業務において集計される数字の経理部門へ提出されるまでの「待ち時間」があります。この「待ち時間」で代表的なものは、月末日締めの売上金額・請求金額の集計(売上高、売掛債権に影響)、取引先からの請求書受領(仕入・原価・販管費等に影響)、そして給与計算です。
給与計算に必要な資料は、もちろん従業員の皆さんの勤怠データです。この勤怠データの集計になかなか時間がかかります。各従業員はその月の勤怠を上長に申請して承認してもらい、そのデータが給与計算担当者に回付されるという流れなのですが、これが毎月スムーズに流れることの方が稀なケースかもしれません。入退職の多い会社ではスムーズに流れないことが多く、IPO準備期の会社ではこの入退職が多いためいわゆるIPOの「あるある」話に挙げられてしまいます。しかも、この給与計算の業務の一部を外部委託している場合、従業員全員が集まらないと委託先に勤怠データを渡すことができず、本来業務の効率化を図るために外部委託しているにもかかわらず、従業員全員が集まらないことで業務が滞ってしまう「最悪のケース」となってしまいます。このような事象が1件でも発生すれば給与計算の業務に遅滞が発生し、決算業務自体に大きな影響が生じることとなるのです。
少々細かい例を挙げましたが、これらの例をよく考えてみると「決算の早期化」は経理部門だけでは解決せず、むしろ経理部門以外の各部門・各業務の業務の効率化や問題点の解決が無ければ「決算の早期化」は実現しないと理解した方がよいかもしれません。特に給与計算に必要な勤怠データは従業員一人一人が勤怠管理のルールを十分に理解し遵守して遂行してもらうことが絶対条件です。従業員皆さんの協力が必須であることを念頭に置き、勤怠管理のルールを十分に理解し遵守して遂行してもらうため準備することをお勧めします。
IPO準備期の給与計算で心掛けたいこと⑥
給与計算で心掛けたいことの最後に挙げるのは、決算マニュアルの項目にぜひ給与計算に関する項目を入れていただきたいということです。これは決算マニュアルの作成に携わる経理部門と給与計算の業務に携わる皆さんとの連携が必要になります。
一般的に決算マニュアルと言えば経理・会計処理に関する業務の流れなどを定めることが多いのですが、今回お勧めするのはその経理・会計処理に必要な数字を集計する各業務についてもこのマニュアルに加えることです。特に今回は、給与計算に関する項目を加えることを強くお勧めします。「そのような必要があるのか?」と疑問に思われるかもしれません。ですが、会計基準を思い出してください。会計基準の中に人件費の計上に関する記述(給与等の費用は「発生主義」、など)があります。なぜ「給与等の費用は発生主義」であると会計基準にわざわざ規定されているのかと言えば、経理・会計処理に必要な数字は「根拠」が必ず必要であり、その「根拠」が正しく集計される必要があるからです。そのように考えると、決算マニュアルに給与計算に関する項目があることは不思議なお話しではありません。むしろ集計の計算式、方法など勘定科目「給与」に関するルールを定めていなければ、財務諸表に記載される勘定科目「給与」の数字の正しさを説明することは難しいでしょう。そのためにも、ぜひ決算マニュアルの項目にぜひ給与計算に関する項目を入れていただくことをお勧めします。
IPO準備期の会社の給与計算については、数回に分けて皆さんと一緒に考えてみました。細かい点を挙げましたが、これらは給与計算の業務に携わる皆さんにとって大切なことなのですが、それ以上にIPO準備期の会社にとって非常に大切なことだと考えます。会社のIPOを推進する立場の皆さんには、この給与計算の業務に限らず各業務の細かい点はすべて会社がIPOするにあたって解決しなければならないポイントであることをぜひ忘れないでいただきたいと思います。一方、給与計算の業務に携わる皆さんはご自身の業務だけに捉われず、他の業務と連携してIPO推進全体に協力する体制を整えていただくことをお勧めします。
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