IPO準備/上場会社でひと工夫Part.21-リテラシー教育③-
- 長嶋 邦英

- 2月15日
- 読了時間: 7分
IPO準備会社と上場会社。それぞれ立場は違いますが、意外にもその悩みどころや解決策に共通点があります。ここではその " ひと工夫 " をご紹介します。
今回は、以前に取り上げました「リテラシー教育」のひと工夫を再度取り上げます。

会社のリテラシー教育は重要
今から1年半前の2024年07月、09月に「IPO準備/上場会社でひと工夫」シリーズでこのリテラシー教育について皆さんと一緒に考えてみました。そのときは、会社におけるリテラシー教育の大切さと意識を高めるリテラシー教育のお勧めをしました。(IPO準備/上場会社でひと工夫 Part.13 -リテラシー教育のひと工夫-、同Part.14 -リテラシー教育のひと工夫②-をご参照ください。)それから1年後の2025年10月に、TDnet(適時開示情報閲覧サービス)に某社の不適切な会計処理事案が公表されたことは、皆さんのご記憶にあるかと思います。その事案の調査報告書(某社の特別調査委員会によるもの)が直近のTDnetで公表されていることをご存知でしょうか。これはぜひ皆さんにも読んでいただき、皆さんの会社での内部監査・内部統制に活かしていただきたいと思っております。理由は、かなり大規模な不正行為事案であることと、それらの不正行為事案は単なる不正行為(不適切な会計処理)ではない、「もっと根深いもの」があるのではないかということを気付かせてもらえるような内容であるからです。私の記事では、普段このような不正行為等に関する記事は「" 発生事実(不祥事) " が発生しない上場会社の内部監査」シリーズで取り上げるのですが、先の「もっと根深いもの」について取り上げてみたいと考え、切り出した次第です。
限定付結論の根拠 要約中間連結財務諸表注記(過年度の虚偽表示の修正再表示)に記載されているとおり、****株式会社(以下、「会社」という。)は、連結子会社で在庫に関する不適切な会計処理(損失の先送り)を2025年7月に発見した。その後、社内調査と当監査法人の監査により、会社及び他の連結子会社においても在庫に関する不適切な会計処理が発見され、会社役職員の関与の可能性も生じたため、会社は、2025年10月に特別調査委員会を設置して調査を進めるとともに、会社(外部専門家を含む。)による自主点検を実施した。 (*社名を伏せております。)
(引用:某社不適切な会計処理事案に対する会計監査人の「期中レビュー報告書」より)
上の引用は、会計監査人が某社に対して提出した「期中レビュー報告書」に記述した限定付結論の根拠を示したものとなております。この某社による自主点検によると、当初発覚した連結子会社での不適切な会計処理事案のほかにも多数の事案が発覚したことが「調査報告書に記されております。ページ数で290ページです。不正行為の中には2016年から継続して行われていたものもあり、これらの事案は単に不正行為事案が複数発生したというよりは、むしろそれら不正行為が「通常業務」として遂行されているのではないかという印象をもってしまいます。さきほど「もっと根深いもの」と表現したのは、一般的には不正行為なことが社内では通常業務であるように遂行されてしまうその社内の雰囲気と、そのような行為をするように指示を出した管理職、上長、経営者層の考え方にその根深いものがあると考えたからです。某社では経営管理体制・内部統制の再構築、不適切な会計処理事案の再発防止等を目的として、新たに経営改革委員会を発足したとのことですが、「もっと根深いもの」を改善できるのかどうか今後も注視したいと思っております。
「もっと根深いもの」を改善するには、以前の記事「Part.14 -リテラシー教育のひと工夫②-」でご紹介したとおり、リテラシー教育が必要です。リテラシーとは「読み書き能力。また、与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能力。応用力。」(参照:小学館・デジタル大辞泉)であり、かなり昔の会社ではこのリテラシーはそもそも各従業員それぞれがすでに持っているものであると考えていたため、わざわざ会社で教育する必要がないと考えられていました。それが現在では少しずつですが会社の社員教育カリキュラムのひとつに加えられているところが増えました。会社としては、素晴らしい従業員が増えることで業績と企業価値の向上を目指す目的と、その反面で不正行為等不祥事リスクを低減する目的というそれぞれの目的の達成又はその両方の相乗効果を望んでいます。いずれにしても、リテラシー教育に力を入れている会社は素晴らしいと考えます。むしろ、リテラシー教育に力を入れていない会社でもし不祥事事案が発生したら、その行為をした従業員はもとよりその会社にも不祥事事案に対する大きな代償が伴います。ただ残念なことですが、リテラシー教育を含む社内教育に消極的な会社は少なくありません。費用がかかりますし、業務の時間を取られます。ですから消極的になるのも理解できるのですが、その費用と時間を惜しむあまりに不祥事リスクに対応しないのは・・・あまり良く方法だとは思えません。ぜひリテラシー教育の実施を検討することをお勧めします。
会社の不祥事の大きな原因はリテラシー教育不足
会社に不祥事が発生したとき、皆さんはまず何を考えますか?多くの皆さんは「誰が何をやったのか」かもしれません。私も以前はそうでしたが、これまでの多くの内部監査・内部統制の業務経験をいただいているうちに、最近では、どのような背景/経緯なのか。規程・業務マニュアルは存在するのか。社員教育は実施されているのか。その会社の雰囲気・社風はどのような感じなのか。このようなことが気になっています。従業員の一挙一動を細かく規程・業務マニュアルに定める必要はありませんが、上長・管理職・経営者の気分次第で決裁内容がコロコロと変えられるような曖昧な決裁権限や、簡単に例外が認められてしまうような幅広い/曖昧な解釈が可能な規程・業務マニュアルは定めていること自体がムダですし、もっと大切なのは不祥事が発生しにくい、不祥事を起こさせない、曖昧さが蔓延っていない社内の雰囲気・社風を作り上げることです。リテラシーとは、適切に理解し解釈し分析しそれらを記述・表現する力です。会社としてはリテラシー教育を単なる知識を学ぶ場ではなく、学んだ知識を業務の現場において実践で使いこなし、業務経験を積んでもらうことを目的とすることをお勧めします。このように考えると、社内教育に費用がかかる、業務の時間を取られる、だから社内教育に消極的になるという考え方ではなく、むしろ座学のような社内教育と並行して学んだ知識を業務の現場において実践で使いこなしてもらう、業務経験を積んでもらう社内環境を整備することが重要だと考えます。
リテラシー教育と言ってもたくさんの分野があります。業務に関係するもので挙げますと、コンプライアンス、営業、IT、情報、法務、会計等様々です。これらすべてを全従業員に毎年実施するのは困難なことは明らかです。皆さんの会社において「会社の方針として何を重視するのか」を十分に検討して、各ジャンルから取捨選択して教育を実施するのがよいでしょう。もちろん、教育を実施したらそれを業務において実践できる、業務経験を積んでもらうための社内環境を整備することができたらBestです。このようなリテラシー教育の実施と社内環境を整えることによって、従業員同士での相乗効果と社風の浄化が期待できると考えます。ぜひこの機会に社内教育を見直して、会社も従業員も一緒に成長できる社内環境を作ることをお勧めします。
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