管理系部門がIPO準備でやることPart.20 -人事編⑧-
- 長嶋 邦英

- 1月4日
- 読了時間: 7分
「管理系部門がIPO準備でやること」について、今回も引き続き人事編です。

ここ数回、以下の記事でIPO準備期の人事の役割についてご紹介しながら皆さんと一緒に考えております。これまでの人事編は以下のとおりです。
なぜここまでIPO準備期の会社での人事を取り上げているかというと、他の会社の人事の業務と比べて少々違う点があること。また、業務それぞれを個別にみると、他の会社の人事の業務とは明らかに違うかたちの活動を行い、その業務量は増加するからです。
今回の記事では、人材教育について皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
IPO準備期の人材教育で心掛けたいこと①
これまで数回に分け、IPO準備期の会社の人事がやることとして採用、労務管理、給与計算の順に挙げて、皆さんと一緒に考えてみました。もうすでにお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、これまで挙げてきましたIPO準備期の会社の採用、労務管理、給与計算と他の会社のこれらの業務と違う点は、他の部門・業務との連携度合いが強いという点です。上場会社になるとさらに連携度合いが強くなります。
私が申しあげたいのは、非(未)上場、上場、IPO準備の会社それぞれの人事業務は、やること自体は同じとみえて、じつは大きな違いがあるということです。これは人事業務を担当する皆さんはもとより、人事責任者や経営者層の皆さんもこの大きな違いをよく理解していただきたいと思っております。
さて今回は、人材教育について皆さんと一緒に考えてみたいと思います。かなり昔話になりますが、人材教育を実施している会社といえば大きな会社や上場会社でした。しかし現在では、大中小の規模に関わらずほとんどすべての会社において人材教育が実施されていると思います。例えば労基法の「安全配慮義務」に基づく雇入時教育(安全衛生教育・労働安全衛生法第59条第1項)、「ハラスメント」教育(2022年04月より中小企業も義務化の対象)、内部通報制度(従業員数301名以上の会社は義務。300名以下の会社は努力義務。※公益通報者保護法)に関する教育など法的義務として実施するものや、会社として必要な人材を育てるための教育を実施するものがあります。
極端なことを言いますが、IPO準備期の会社では法的義務のある教育の実施だけでなく上場会社として一般的に実施されている人材教育についても実施することをお勧めします。法的義務のある教育には先ほどのとおり従業員数の設定があるものもありますが、IPO準備期の会社はその設定にかかわらずすべて実施するのがよいでしょう。なぜなら、上場後は業績だけでなく会社の規模も大きくなり、従業員数300名はすぐに超えます。すると「超えてから実施しよう」と考えていても、すぐに実施することが難しくなります。これは上場会社の「あるある」で、上場後に新しいことを始めようとしてもなかなかできなくなってしまうものです。それではIPO準備期間中に実施しようと考えても・・・これもなかなか難しいです。なぜなら、IPO準備期間中は多くの「初めて実施」や「新しい業務」があり、それらに追いつくのに従業員の皆さんは精一杯だからです。これも以前の記事ですでにご案内のとおり、IPOの準備期間は少なくとも2.5〜3年、できれば3年間(※事業年度ではありません)の期間が必要です。その理由は、このようないわゆる「IPOのための準備」だけでなく上場会社としての「あるべき姿」になるには、社内に多くの「初めて実施」や「新しい業務」が発生し、これらは短期間で実施するには難しいからです。その難しいものうち、最も難しいもののひとつが人材教育なのです。
IPO準備期の人材教育で心掛けたいこと②
ここからは「IPOのための準備」だけでなく上場会社としての「あるべき姿」になるための人材教育について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。上場会社としての「あるべき姿」になるための人材教育で大切なことは2つです。
コンプライアンス教育
ガバナンス教育
今回の記事では1. コンプライアンス教育についてご紹介します。
コンプライアンス教育は3つに分類できます。①法令遵守のための教育、②法令以外のルールを遵守するための教育、③倫理・規範のための教育です。
①については、ほとんどすべての会社で実施していると思います。難しい点としては、会社の業種・業態によって適用される法令が異なりますので、これをすべて洗い出す作業が必要なことです。これ加えて、会社が成長するにつれ今後適用されるであろう法令や法改正によって今後適用されることとなる法令についてもPick upしなければなりません。これの典型的な例として、さきほど挙げました従業員数の設定があるものは会社が成長するにつれ適用されることを予想しなければなりませんし、法改正によって今後適用されることとなる法令としては労働基準法ほか労働関連法令です。これら洗い出しや予想を人材教育を担当する皆さんだけで行うのは難しいので、できれば外部の力(社会保険労務士/労務に強い弁護士の先生方など)に頼ることをお勧めします。
②については、これも会社の業種・業態によって大きく違いがあります。例えば、特定の業界にある「業界ルール」があります。ここで注意しなければならないのは、皆さんの会社の「中期経営計画」(中期計画)です。その中期計画に、他業界・他業種への参入を企画している場合はその業界の業界ルールについて事前に知り、教育することをお勧めします。また、海外企業との取引が多くなる会社や海外に事業拠点を設ける会社も要注意です。海外の国々の法令は日本の法令と大きく異なる点があります。法令以外のルールも存在するかもしれません。いざ海外進出を決めた後に大きな障壁が存在することに気付き、最終的には断念することになってしまうこともあるかもしれません。これら海外進出、進出断念の決定は、上場会社として業績に影響があるものであればすべて開示する義務が発生します。(※決定事実、発生事実)そうなると多大な損害・損失を被ることになりかねませんので、事前の調査と準備を行ったうえで従業員に対して教育する必要があります。ぜひご注意ください。
③については、とても難しい教育です。難しい理由は、何に基づいてどのような内容をどの範囲まで教育するのかを決めるのが難しい点です。最近では、海外の方々が皆さんの会社の従業員として入社されているケースが多いと思います。「日本で働くのだから」といって海外の方々に対して日本の倫理、規範、風習等を押し付けるのは芳しくありません。だからといって海外の倫理、規範、風習等によって日本で働くことができるわけではありません。この点について私は正解を持ち合わせてはおりませんが、少なくとも日本・海外それぞれの倫理、規範、風習等の違いを理解し、そのうえで「日本で働くには」の倫理、規範を教育する必要があると考えます。少し話しが広がってしまいましたが、何に基づいてどのような内容をどの範囲まで教育するのかを決めるのに必要なことは、会社の方針と経営者層(特に代表取締役)の考えです。会社の方針と経営者層の考えがハッキリとしていれば、倫理・規範のための教育の内容を決めることができます。この点については、人材教育を担当する皆さんと経営者層とで、少し時間をかけてでもじっくりと協議・検討することをお勧めします。
上場会社としての「あるべき姿」になるための人材教育で大切なこと2つのうち、1つ目のコンプライアンス教育についてを、駆け足でしたが皆さんと一緒に考えてみました。IPO準備期の人材教育で大切なことは、上場会社としての「あるべき姿」になるための人材教育であることです。IPO準備期というほんの一時期のお話しではないということです。このことを踏まえつつ、次回は続きの「2. ガバナンス教育」です。
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