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"発生事実(不祥事/不正行為)"が発生しない上場会社の内部監査 Part.25 -子会社-

  • 執筆者の写真: 長嶋 邦英
    長嶋 邦英
  • 10月5日
  • 読了時間: 8分

 上場会社での発生事実(不祥事/不正行為)が跡を絶たない昨今、内部監査はその責務を果たすため、どのようにしたら良いでしょうか。

 今回は改めて「子会社」を内部監査の目線でみていきます。


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 以前にも数回内部監査の目線で子会社をみてみましたが(※)、直近でも適時開示閲覧システム(TDnet)に子会社における内部統制上の重要な不備の事案が発生しましたので、今回改めて内部監査の目線で子会社をみてみたいと考えております。

 皆さんと一緒に考えてみたポイントは以下の3点です。

  • 親会社にとっての子会社管理の変化

  • 子会社を内部監査する際の目線

 今回は2つを取り上げます。


※以前の記事は以下のものとなります。(子会社だけでなく事業拠点も含みます)



直近事例から - 概要説明 -


【事案の概要】

 ある上場会社は連結子会社A(海外)において貿易取引上の問題の存在を認識し外部専門家による調査を行ったところ、税務上の問題が発生していることを認識した。当該上場会社はその調査結果を踏まえ、更なる社内調査・検討を行いこの問題への対処を進め、その結果有価証券報告書の提出期限延長申請を行い、その承認を得た。  また、これとは別に、別の子会社B(国内)の子会社C(孫会社・海外)において不適切な会計処理が行われている疑義があるとの報告があり、当該上場会社が調査を行ったところ、その調査の過程でさらに子会社B, C以外の子会社においてもそれらの経営陣の関与又は認識の下で、資産性にリスクのある資産に関して評価減の時期を恣意的に検討しているとも解釈しうるなど、不適切な会計処理が行われていたことを疑わせる資料が複数発見された。  当該上場会社はこれらについて会社から独立した第三者委員会による客観性のある調査を行う必要があると判断し、第三者委員会を設置した。

(出典:TDnetに掲載の某社リリースより要約)



親会社にとっての子会社管理の変化①

 親会社にとっての子会社管理は、ずいぶんと様変わりしていることを実感しています。例えば、以前であれば海外現地において製造拠点として子会社を設立するというケースが多かったと思いますが、少し前から自社の製品・商品・サービスを海外に販売していくための販売拠点として子会社を設立するというケースが多くなっています。そうすると親会社は、リスク管理としては財務、税務、販売、労務、法務など広範囲にわたるリスクコントロールについて今まで以上に情報を把握し、リスクの緊急度や重症度に応じて優先順位を決定する「トリアージ対応」を高い感度で行わなければならなくなりました。おそらくそのようになった要因のひとつとして、いままでは海外現地に子会社を設立するときは日本から経営者層を派遣し、日本人によってその海外子会社を経営していたところ、最近ではその海外現地の方による海外子会社の経営が多くなったということがあると考えます。この要因はごく当然なことで、むしろ以前のように日本からわざわざ日本人を送り込んで海外子会社の経営に当たらせる方法のほうが無理矢理だったかもしれません。なぜなら、海外現地では日本とはまったく違うその現地の言語、文化、風習等があり、それを傍に置いて親会社による海外子会社の経営と管理が問題無く行えると思っていたこと自体が甘いのではないかと考えるからです。ほかにもいろいろありますが、そのように考えますと親会社にとってのグループ経営としての子会社管理が様変わりしていることがよくわかります。


 さて、私たち内部監査の立場としても、子会社をどのように捉え、普段からの継続的モニタリングを含む内部監査を実施するのかについて、同じようにその様変わりに対応していく必要があると考えます。もちろん、これまでもその海外現地に赴いて実査するなどして対応していたと思いますが、事前の情報収集からその具体的な監査テーマの設定等監査手続の作成のいわゆる事前の準備のところが大変重要になっていると考えます。今回改めて内部監査の目線で子会社をみることについて皆さんと一緒に考えたいと思ったのは、この事前の準備のところでどのような目線で内部監査を行うのかを、もう一度考えてみたいと思ったからです。



親会社にとっての子会社管理の変化②

 親会社にとっての子会社管理の変化について、もう少し掘り下げてみたいと思います。

 前述で、親会社はリスクの緊急度や重症度に応じて優先順位を決定する「トリアージ対応」を高い感度で行わなければならなくなったとご紹介しました。言葉・表現が悪いのですが、子会社の「お箸の上げ下げ」一つ一つに口うるさいというような管理を行なっている親会社があったと思います。それはそれでもちろん良いと思いますが、昨今の社会状況、とりわけその海外現地の国はもとよりその国と関係する諸外国を含むいわゆる地政学的リスク等様々な社会状況がもろに私たちの会社に大きな影響を及びますし、その影響も大小様々です。そうするとそのような影響一つ一つに対応するためのレポートラインの確立と対応マニュアルの拡充が必要となります。ここで大切なのは「トリアージ対応」の内容です。このトリアージ対応の内容が子会社管理の大きな決め手になると考えます。このトリアージ対応とは、単に優先順位を決めることだけではありません。その優先順位を決めるには事前の情報収集とその情報の分析が必要ですし、その優先順位を誰が決めるのか、優先順位を決めたら誰が何をどのように行うのか。医療の分野で行われているトリアージが、まさに会社においても経営・事業運営の手法として必要とされています。


 このトリアージ対応について、皆さんの会社でもリスク対応/インシデント対応マニュアルとしてあると思いますが、収集された情報の分析や優先順位の決め方等がいわゆる「人の感覚」に頼っていることが意外と多く、情報分析や優先順位決定の基準等を確立してシステマティックに行われているケースが少ないように感じます。今回の記事の直近事例でも、ある税務上の疑義が発覚してそれについて調査したところさらに大きな不適切な会計処理が発覚し、しかもそれらには経営者層による誤った認識とそれに基づく関与が行われていたとあり、これらは単なる不祥事事案というよりはそもそもの子会社の経営における判断基準が甘く共通認識もバラバラであったことが原因なのではないかと想像します。物事の判断基準は人によってバラバラであることはもちろんですし、それぞれの個性・良さを活かすことは大切です。しかし会社経営における物事の判断基準がバラバラであることはお勧めできません。また、細かいお話しですが、その判断基準が例えば円による金額基準である場合、その金額基準の設定で良いのかが疑問です。円建ての金額を海外現地の通貨に換算してこれを基準にする場合、果たしてその基準が妥当なのかを検討することをお勧めします。なぜなら、日本では約600円でタバコを買うことができますが、海外では違います。要するに日本と海外現地の「物価」が違うのに金額基準を同じにしてしまってよいのか?なのです。海外現地では僅かばかりの金額と思っていても、日本の親会社では大きな影響を及ぼすことになるかもしれません。会社経営における物事の判断基準がバラバラであることはお勧めしかねますが、判断基準を統一/共通にしたとしてもその基準がそれぞれの現地で妥当なのかどうかも注意して再度検討する必要があると考え、これもお勧めします。



 さきほどご案内のとおり、以前にも子会社とその管理については記事で取り上げておりますが、これはいま現在の社会・世界の状況の中で日本が置かれている立場によってこれからも様変わりし続けると考えます。ですから、いま現在考えている子会社管理の方法等についてもすぐに陳腐化するでしょう。また皆さんの会社の業種・規模等によっても違うと思います。ぜひ継続的に検討していくことをお勧めします。 次回はこの続き、子会社を内部監査する際の目線について皆さんと一緒に考えてみたいと思います。






当社が提供するサービスとして


当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、


  1. IPO準備中企業の内部監査体制の構築とその業務内容の確立をサポート支援いたします。

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 この機会に、ぜひ内部監査のあり方、必要性をご理解いただき、内部監査体制構築/再構築をご検討ください。



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