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"発生事実(不祥事/不正行為)"が発生しない上場会社の内部監査 Part.21 -監査/評価の範囲-

  • 執筆者の写真: 長嶋 邦英
    長嶋 邦英
  • 8月3日
  • 読了時間: 6分

 上場会社での発生事実(不祥事/不正行為)が跡を絶たない昨今、内部監査はその責務を果たすため、どのようにしたら良いでしょうか。

 直近事例を内部監査の目線でみていきます。



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 最近になって適時開示情報閲覧サービス(TDnet)に「開示すべき重要な不備」が続出していることに、寂しさを感じていました。そのようなときに、とても大変な事案を目にしましたので、今回はそれを内部監査と内部統制の目線で皆さんと一緒に考えてみたいと思いました。


 今回の直近事例の概要と考えてみたいポイントを挙げます。


  • 「内部統制を無視又は無効ならしめる」ものへの向き合い方

  • 喫緊の課題は人的リソースではなく「見る目」と「気づき」

  • 監査/評価の範囲が問われる


 これらについて注目します。





直近事例から - 概要説明 -


【事案の概要】

 ある上場会社は、証券取引等監視委員会による調査を受けており、これを端緒として同社は第三者委員会を発足して調査・確認を進めたところ、同社が販売するサービスの売上高が過大に計上されている可能性を認識した。また調査を進めると、過大計上が売上高だけにとどまらず広告宣伝費、研究開発費にも及んでいることが発覚した。なお同社は、新規上場申請時に申請書類の財務諸表などに虚偽の情報を記載し、上場承認を得ていたことも認めている。  この事案は大きな波紋を呼びマスコミ報道される一方、東京証券取引所は同社を上場廃止にすると決定した。

(出典:TDnetに掲載の某社リリースおよびマスコミ報道記事より要約)



「内部統制を無視又は無効ならしめる」ものへの向き合い方

 今回の事案は2023J-SOX改訂版の財務報告に係る内部統制の評価及び監査の実施基準(以下「実施基準」といいます)で示されていたことが、まさに悪いかたちで具現したものといえます。

3.内部統制の限界  (中略)  さらに、経営者が不当な目的のために内部統制を無視又は無効ならしめることがある。しかし、経営者が、組織内に適切な全社的又は業務プロセスレベルに係る内部統制を構築していれば、複数の者が当該事実に関与することから、経営者によるこうした行為の実行は相当程度、困難なものになり、結果として、経営者自らの行動にも相応の抑止的な効果をもたらすことが期待できる。適切な経営理念等に基づく社内の制度の設計・運用、適切な職務の分掌、組織全体を含めた経営者の内部統制の整備及び運用に対する取締役会による監督、監査役等による監査及び内部監査人による取締役会及び監査役等への直接的な報告に係る体制等の整備及び運用も経営者による内部統制の無視又は無効化への対策となると考えられる。

(引用:実施基準55ページより)


 皆さんもご存知のとおり、2023年にJ-SOXが改訂された経緯は「経営者が内部統制の評価範囲の検討に当たって財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性を適切に考慮していないのではないか等の内部統制報告制度の実効性に関する懸念が指摘されている」(引用:「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について」企業会計審議会・1ページ)ことを受けてのものです。それにも関わらず、大きな出来事、しかも日本の株式市場の根幹を揺るがすような出来事が発生しました。

 「脅威は外(社外)にある」とよく聞くのですが、じつのところはまったく違います。不正・不祥事も情報セキュリティ上の事案も、その原因の多くは社内です。外的要因は多くはありません。それに悲しいことですが、最近の「開示すべき重要な不備」は経営者層が起因していることが多く発生しています。私たち内部監査・内部統制に携わる皆さんからすると、経営者層自身が「内部統制を無視又は無効ならしめること」をしていたらどうにもなりません。しかし、私たち内部監査・内部統制に携わる皆さんが投げ出すわけにはいきません。何をしたら良いでしょうか?



喫緊の課題は人的リソースではなく「見る目」と「気づき」

 以前の記事「"発生事実(不祥事/不正行為)"が発生しない上場会社の内部監査 Part.19 -人的リソース-」、「Part.20 -人的リソース②-」で人的リソースを取り上げました。そこでは世間的にも不足している内部監査の人的リソースをどのように確保するか?を皆さんと一緒に考えたものとなっております。しかし、人的リソースの確保は、不祥事/不正行為が発生しないための内部監査を作り上げるための要素の一部分でごくわずかです。もっと大きな要素があります。それは「見る目」と「気づき」を持つ内部監査人材が会社に居るかどうかで、こちらがもっとも重要な要素です。

 今回の事案の会社の調査報告書によると、まず同社の内部監査担当者が2名いたとのことです。加えて「業務の有効性及び効率性等を担保することを目的として」内部監査を行なっていたと報告されています。それなのに、なぜ今回の事案発生を防げなかったのか?とても疑問です。しかし、ここでは「皆さんの会社ではそうならないようにするには、どうしたら良いか?」を考えます。


 まずは「見る目」と「気づき」を持つ内部監査人材を確保することだと考えます。内部監査は監査を行えば必ず「記録」します。この記録は監査手続書、監査調書、監査報告書いずれのどこかにはあるはずです。今回の事案でも、これらのドキュメントのどこかに記録されていれば、内部監査部門、監査役会、取締役会のどこかで見逃すことは無いと思います。見逃すことがなければ、改善することができたのではないかと考えます。そのように、「見る目」と「気づき」を持つ内部監査人材を確保し、その内部監査人材が社内の隅々まで目配せして「見る目」と「気づき」を持って内部監査を行うことで不祥事/不正行為が発生しない会社を作り、従業員の皆さんが安心して働くことができる職場となり、ひいては企業価値の向上につながります。ただし、「見る目」と「気づき」は養うことが難しいです。私たち内部監査に携わるものたちとしては、常日頃から「見る目」と「気づき」は養うことに専念することをお勧めします。また経営者層の皆さんへは、「見る目」と「気づき」を持つ内部監査人材を確保することと内部監査の外部委託をお勧めします。



監査/評価の範囲が問われる

 「見る目」と「気づき」を持つ内部監査人材を確保することは、とても難しいです。そのため、今回の事案のような不祥事発生防止のためにすぐにでもできるものをご提案します。それは、内部監査の監査範囲と内部統制の評価の範囲の見直しを行うことです。

 文字数の関係で詳しくは次回の記事でご紹介しますが、内部監査の監査範囲と内部統制の評価の範囲は通常年次計画でその範囲を決定しているもので、その範囲の偏っていることが致命傷になりかねないと考えます。監査/評価の範囲をどのように決めるのか?範囲を決める要素は?範囲を決める際のコツは?などを、次回の記事で皆さんと一緒に考えてみたいと思います。








当社が提供するサービスとして


当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、


  1. IPO準備中企業の内部監査体制の構築とその業務内容の確立をサポート支援いたします。

  2. 上場企業の内部監査体制の再構築、業務内容の改善をサポート支援いたします。

  3. IPO準備中・上場企業の内部監査業務の業務委託受託先(外部)として業務遂行いたします。(*内部監査責任者として、社内に1名選任をお願いします。)


 この機会に、ぜひ内部監査のあり方、必要性をご理解いただき、内部監査体制構築/再構築をご検討ください。



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