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"発生事実(不祥事/不正行為)"が発生しない上場会社の内部監査 Part.20 -人的リソース②-

  • 執筆者の写真: 長嶋 邦英
    長嶋 邦英
  • 7月20日
  • 読了時間: 7分

 上場会社での発生事実(不祥事/不正行為)が跡を絶たない昨今、内部監査はその責務を果たすため、どのようにしたら良いでしょうか。

 直近事例を内部監査の目線でみていきます。



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 前回の記事「"発生事実(不祥事/不正行為)"が発生しない上場会社の内部監査 Part.19 -人的リソース-」についていろいろお問合せをいただきましたので、今回はその続きをご紹介しながら皆さんと一緒に内部監査・内部統制の人的リソースについて考えてみたいと思います。


 改めて前回ご紹介した直近事例の概要とのポイントを挙げます。


  • 内部統制体制のカギは人的リソースの確保

  • 人的リソース不足は喫緊の課題

  • 内部監査人材は「外から採用」?「内で育成」?


 このうち、人的リソースの確保について注目します。





直近事例から - 概要説明 -


【事案の概要】

 ある上場会社は決算期末時点において、会計監査人から「内部統制上の開示すべき重要な不備に該当する」との判断を受けた。これは当該会社において経営層による不正行為を抑止できなかったこと(=全社統制に問題があるとの指摘)と、決算期末までに十分な人員の補充を行う事が出来ず、決算・財務報告プロセスに対する統制が不十分であり、重要な不備が存在すると判断されたもの。  当該会社は、本件に関する事実の判明が当事業年度末日以降であったため、当該決算期末までにその是正が間に合わなかったが、その後コンプライアンス体制の強化、人員の補充・強化を行なったことで解消した。 

(出典:TDNETに掲載の某社リリースより要約)



内部統制体制のカギは人的リソースの確保②

 経営者は、会社の内部統制を整備及び運用する役割と責任があります。これは2023J-SOX改訂版の財務報告に係る内部統制の評価及び監査の実施基準(以下「実施基準」といいます)「4.内部統制に関係を有する者の役割と責任」でその役割と責任が示されています。


(1)経営者  経営者は、組織の全ての活動について最終的な責任を有しており、その一環として、取締役会が決定した基本方針に基づき内部統制を整備及び運用する役割と責任がある。  経営者は、その責任を果たすための手段として、社内組織を通じて内部統制の整備及び運用(モニタリングを含む。)を行う。  経営者は、組織内のいずれの者よりも、統制環境に係る諸要因及びその他の内部統制の基本的要素に影響を与える組織の気風の決定に大きな影響力を有している。 (注) 本基準において、経営者とは、代表取締役、代表執行役などの執行機関の代表者を念頭に規定している。

(引用:実施基準57ページより)


 経営者に会社の内部統制を整備及び運用する役割と責任があるとしていますが、実際に経営者の皆さんが直接内部統制の役割を担うことはあまりないと思います。経営者、特に代表取締役社長は会社の業務執行の最高責任者であり、社外においては会社を代表してその責任を担っているので、会社の経営方針に基づいて内部監査・内部統制に関する指示・命令をするにしても直接実務に携わるのは難しいです。そのために私たち内部監査・内部統制人材がいます。そう考えると前回ご紹介したとおり、私たち内部監査・内部統制人材は「手を動かすことができるリソース」でなければなりませんし、会社の経営方針と経営者・代表取締役社長等の考えを踏まえて内部監査・内部統制の業務に携わることが求められると考えます。

 このように見ると、内部統制体制構築・維持のカギは人的リソースの確保であるとご紹介しましたが、会社の経営方針と経営者・代表取締役社長等の考えをよく理解したうえで実際に実務が出来る内部監査・内部統制人材は、大変貴重な存在かもしれません。



内部監査・内部統制人材をどう確保する?

 内部監査・内部統制人材をどう確保するのか?前回の記事では、内部監査・内部統制人材をできる限り「社内で育成」することをお勧めしました。しかし、これは簡単なことではありません。社内で育成するといっても、一朝一夕とはいきません。そのため外部委託をお勧めしております。(以前の記事「- 内部監査の「外部への委託」は可能? -」、「- 内部監査の「外部委託」をお勧めします -」をご参照ください)


 先日「内部監査・内部統制を外部に委託することは、上場審査時にNGになりませんか?」とのお問合せをいただきました。回答は、上場審査時にNGになりません。株式会社東京証券取引所(上場推進部IPOセンター)発行の「新規上場ガイドブック」に次のような記述があります。


 一方で、内部監査業務をアウトソーシングする場合は、通常、公正・独立性は担保されると考えられますが、アウトソーサー任せにせず、社長等が内部監査の重要性を認識したうえで主体的に関与しているかどうかを確認します。例えば、計画・監査内容の策定や改善方法の決定等といった主要な業務を申請会社が行うことが考えられますが、ノウハウやリソースの関係からそれらを含めて包括的にアウトソースする場合には、実効性の高い内部監査が実施されるよう、会社の現状、業務内容、問題意識などを適切に伝えたりするなど主体的に関与することが必要となります。

(出典:2024新規上場ガイドブック・69ページ)


 これは、東京証券取引所で行われる上場審査での実質審査基準の内容とそのポイントについて説明されているもので、上場審査等に関するガイドラインⅢ 4.にあるように、

(2)新規上場申請者及びその企業グループが経営活動を有効に行うため、その内部管理体制が、次のa及びbに掲げる事項その他の事項から、適切に整備、運用されている状況にあると認められること。 a 新規上場申請者の企業グループの経営活動の効率性及び内部牽制機能を確保するに当たって必要な経営管理組織(社内諸規則を含む。以下同じ。)が、適切に整備、運用されている状況にあること。 b 新規上場申請者の企業グループの内部監査体制が、適切に整備、運用されている状況にあること。

これについて説明している箇所です。

 上場審査において「b. 新規上場申請者の企業グループの内部監査体制が、適切に整備、運用されている状況にあること」が必要なのですが、審査においては「内部監査業務をアウトソーシングする場合」もあることを想定しています。つまり、必ずしも内部監査・内部統制人材はその会社の正社員等であること、とまでは求められていないのです。これは上場後も同様です。ただし「実効性の高い内部監査が実施されるよう、会社の現状、業務内容、問題意識などを適切に伝えたりするなど主体的に関与することが必要」ですので、外部委託先に丸投げしたり、会社の現状、業務内容、問題意識等の情報共有をまったく行わないような状態はNGとなりますので、ご注意ください。

 また別の角度で、手を動かせる内部監査・内部統制人材がそもそも少ないことも事実です。外部委託するにしても、会社の業種、業態、規模(従業員数、売上高等を含む)等が違えば外部委託先にも得手不得手があると思います。外部委託先といろいろ相談して、例えば手を動かしてもらえるのか?等を外部委託先にお聞きになることをお勧めします。


 人的リソースが不足したことが原因で「財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備である」と指摘されてしまうのは、かなり深刻なことだと考えます。なぜなら、この問題の完全な解消には、「外から採用」、「社内で育成」いずれの方法を選択するにしても相当な時間とコストがかかるからです。

 いざということが目の前に起きることがないよう、十分に検討する時間を用意し準備することをお勧めします。





当社が提供するサービスとして


当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、


  1. IPO準備中企業の内部監査体制の構築とその業務内容の確立をサポート支援いたします。

  2. 上場企業の内部監査体制の再構築、業務内容の改善をサポート支援いたします。

  3. IPO準備中・上場企業の内部監査業務の業務委託受託先(外部)として業務遂行いたします。(*内部監査責任者として、社内に1名選任をお願いします。)


 この機会に、ぜひ内部監査のあり方、必要性をご理解いただき、内部監査体制構築/再構築をご検討ください。



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