内部監査の在り方Part.16 -事業計画②-
- 長嶋 邦英

- 9月21日
- 読了時間: 5分
内部監査の業務は、深い知識、広い経験、応用力など多くの要素を必要とした業務です。これらを多角的な視点で、これからの内部監査の在り方を見ていきます。
今回は前回に続き、事業計画です。

事業計画に向き合う
前回の時期(内部監査の在り方Part.15 -事業計画-)では、内部監査にとって事業計画とは何なのかをご紹介しながら皆さんと一緒に事業計画と内部監査について考えてみました。今回は、内部監査は事業計画に対してどのように向き合い、どのように内部監査を行うのかを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
事業計画は会社の指針です。会社の全役員・全従業員はこの事業計画に基づいて業務遂行します。定性的情報の事業計画、定量的情報の予算計画、人員計画、財務計画等様々な計画に基づいて社内の業務をすすめます。もちろん私たち内部監査も、この事業計画に基づいて内部監査計画を立案し内部監査を行いますが、これらは先のとおり事業計画が会社の指針であるからこそ、その内容に沿って/外れることがないように行動します。そのため事業計画は、例えば予算計画は会社の予算管理規程の定めに従って策定するなど、かなり厳格なルールに従って策定することなっていますので、特に上場会社の事業計画は単なる思いつきで事業計画が策定されたり、よほどの理由が無ければ期中に大胆な方針転換に伴う事業計画の変更を行うことは極めて難しいです。なぜなら上場会社は予算実績管理(予実管理)の正確さが求められるため、事業計画の内容がコロコロ変わってしまうことは予実管理の正確さが不明確になり、ステークホルダーからの信用・信頼が失われることになりかねないからです。
それでは、内部監査はこの事業計画に対してどのように向き合ったらよいでしょうか。私がお勧めするのは、事業計画を正しいものとしつつも疑いの目を向けることです。なぜなら、私たち内部監査にとっては内部監査計画を策定するうえで事業計画は大切なものです。しかし事業計画の策定の過程・経緯にガバナンス/コンプライアンス/リスクマネジメントの観点で問題があるかもしれません。また、これは業務監査の範囲となりますが、事業計画に基づく業務遂行の状況も見逃せません。そのように考えると、私たち内部監査は心苦しい思いを抑えつつも事業計画に対して疑いの目を向ける必要があります。もしそのようにしなければ、前回の記事でご紹介した不祥事事案のような「事業計画において過度な目標を設定し、合わせて代表取締役等経営者層からの相当なプレッシャーもあり・・・このような事態となった」になりかねません。ただし、私たち内部監査はその事業計画の良し悪しを判定することはできませんし、しないでください。私たち内部監査は評論家ではありません。事業計画への向き合い方が少しでも違えば、評論家になってしまうことがありますので、十分ご注意ください。
事業計画を内部監査する
次に、事業計画をどのように内部監査するのかを考えてみたいと思います。監査するポイントとしては以下のようなものがあります。
【事業計画の監査ポイント】
事業計画の策定の過程・経緯
事業計画の策定を担当する部門
各部門における事業計画の定量・定性的情報の立案状況
など
事業計画の監査ポイントについては、皆さんの会社の規模、事業内容等によっていろいろ変わります。例えば製造業であれば、3に関連して事業計画の定量・定性的情報の立案のための関係部門(営業・製造・調達各部門等)との連携・調整状況が挙げられます。この関係部門の連携・調整が無ければ予算計画等は作成できませんし、ましてこの連携・調整が無いままで作成していたら大変なことです。それに、先日ご紹介した「事業計画において過度な目標を設定」してしまうケースは、全役員・全従業員の誰もが幸せになることが難しいと考えます。このようなわけで、皆さんの会社によって監査ポイントはかなり変わってくると思いますので、十分にご検討ください。
事業計画を監査するときに十分注意したい点があります。それは、上場会社であればこの事業計画を開示されていることです。そのため、事業計画を監査する時期についても注意したいところです。事業計画をしっかりと監査するために十分時間をかけて検討するとしても、事業計画が開示された後に問題を検出してしまったら大変なことです。かといって事業計画が開示される前までに内部監査するとなれば、簡易なかたちで監査することになりかねません。これについては大変難しいところですが、事業計画の策定を担当する部門と連携して、事業計画の策定状況と並行して監査することをお勧めします。ただし、事業計画策定の邪魔になるような監査は芳しくありません。また事業計画の策定過程においていちいち口を出すようなことは厳禁です。そのようなことにならないよう、事業計画の策定を担当する部門とは策定する以前から監査の内容について十分に説明して理解してもらい、連携してもらえるような関係を持つことが望ましいです。
そして忘れてならないのは、会社にとって、全役員・全従業員にとって、私たちの会社の事業計画がしっかりとした過程・経緯を経て策定されていることを監査することによって証明することが、私たち内部監査の役割です。この事業計画に基づいて業務遂行し業績を上げ企業価値を高める役割は全役員・全従業員です。このそれぞれの役割を見失わないようにすることが大切です。また全役員・全従業員の役割を側面支援することができるのは、私たち内部監査しかできないと考えます。この機会に内部監査の役割について十分検討することをお勧めします。
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