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内部監査に向き合う Part.15 - 監査方法⑥ -

  • 執筆者の写真: 長嶋 邦英
    長嶋 邦英
  • 5月25日
  • 読了時間: 6分

 内部監査は会社・従業員にとってとても大切な働き・役割です。その働き・役割を遂行するためには、知識と経験と心構えが大切だと思います。それらをいったん振り返って整理し、さらに実践に役立つ戦略・戦術として活かすことを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

 今回は監査方法⑥です。







監査方法 -実査①-

 ヒアリングについては「Part.11 - 監査方法② - 」、書面監査については「Part.12 - 監査方法③ - 」、「Part.13 - 監査方法④ - 」、「Part.14 - 監査方法⑤ - 」で皆さんと一緒に考えていますが、今回は監査手続のうちの実査です。


 実査(現地監査)は、被監査対象の業務を担当している部門・部署へ実際に訪問して確認・調査する監査手続のことです。何を確認・調査するかは、それぞれの会社又は業界・業種によって様々です。逆に、もしかすると内部監査の皆さんの中でも実査の経験が無い方もいらっしゃるかもしれませんが、それは当然のことだと思います。理由は、実査で確認・調査する対象としては部門・部署で保管管理している書類、現金、資産等なのですが、例えば書類は最近のペーパーレス化が大いに促進されたことにより部門・部署で保管管理する必要がなくなりましたし、部門・部署で現金決済を必要とするような業務・作業が無くなったことで小口現金を持つことも無くなったためです。業界・業種によっては、例えば小売・飲食店舗を複数持つ会社、ある程度の在庫を倉庫で保管管理する流通・卸売の会社、自社で不動産(土地・建物、高額資産等)を所有する会社などは実査を行いますが、世間にはこれらの会社ばかりではありません。そうすると内部監査で実査するといえば固定資産の現物確認くらいかもしれませんが、これを経理部門等他の部門が担当することもありますので、ますます実査を行う機会が少ないかもしれません。 とはいえ、内部監査が行う実査の機会が今後さらに減少する又は無くなるとは思いません。今後は部門・部署へ実際に訪問して確認・調査する必要が大いに増えると思いますし、むしろ増やす/必ず行うことをお勧めします。


 実査は部門・部署へ実際に訪問して確認・調査することですが、これをリモート面談(又はテレコミュニケーション・会議システム等通信手段を利用して行う面談を指します)に代えて実施している会社が多いと思います。これは大変便利な方法で効率的ですが、かといって効果的、合理的であるかどうかは分かりません。実査においてはこのリモート面談だけで済ませるのは避け、あくまで副次的な方法として利用することをお勧めします。なぜリモート面談が効果的、合理的であるかどうかは分からないかというと、実際に現場に行かなければ分からないことが多々あるからです。固定資産の現物確認、現金実査など資産の実在性の確認はもちろんのこと、ペーパーレス化とはいえ書面ベースで保管管理されているものなどの情報資産の管理状況(保管庫等の施錠管理など)、従業員等の勤務状況、職場環境状況など、挙げたらキリがありません。これらも含めてリモートで確認することは難しいでしょう。ですから業界・業種を問わず、国内外・海外拠点であっても、少なくとも隔年(2年に1度等)のペースで実査することをお勧めします。



監査方法 -実査②-

 私が実査を行うことお勧めする理由のもうひとつとして挙げるのは、実査は書類、現金、資産等を確認・調査するだけではなく、その業務監査、ひいては内部監査の意義を現場の部門・部署の従業員の皆さんに知っていただく良い機会になるからです。現場での限られた時間帯では実査を行うだけで精一杯かもしれませんが、できる限り多くの時間を現場の上長、他の従業員の皆さんからお話しを聞くことに割くことをお勧めします。またお話しを聞く、ヒアリングを行うときは、会議室等で行うより執務スペースで行うのもお勧めです。従業員の皆さんの普段の業務状況を拝見する良い機会ですし、従業員の皆さんにとっても内部監査を知る良い機会です。特命監査のような機密性の高い監査は別ですが、通常の定例・業務監査であれば、できる範囲/差し支えない範囲でオープンにすることもできると思います。

 実査は内部監査の意義を現場の部門・部署の従業員の皆さんに知ってもらうと同時に、現場での誠実な業務遂行の奨励と雰囲気作り、不正行為等の牽制も可能です。これが部門・部署へ実際に訪問する「実査」の強みです。これはリモートでは得られない効果ですし、部門・部署へ実際に訪問することによってこれまでご紹介したような効果をすべて得られるならば、合理的・効率的です。前段で「実査の機会が今後さらに減少する又は無くなるとは考えません。今後は部門・部署へ実際に訪問して確認・調査する必要が大いに増えると思います」とご紹介した理由はこれです。つまり、実査を単に「部門・部署へ実際に訪問して確認・調査する監査手続」と理解しそのまま実施するのではなく、なぜその業務監査で実査を行うのかという意図・意義を私たち内部監査がしっかりと考えて実査を行う必要があるということとなります。これまで監査手続のヒアリング・書面監査・実査とご紹介しましたが、共通して言えることは、監査手続は単なる方法・手段としてではなく、なぜこの方法・手段を用いるのかをよく考えたうえで選択することで、内部監査の目的である「内部監査は、ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメントおよびコントロールの妥当性と有効性とを評価し、改善に貢献する。経営環境の変化に迅速に適応するように、必要に応じて、組織体の発展にとって最も有効な改善策を助言・勧告するとともに、その実現を支援する。」(出典:内部監査基準1ページ「1. 内部監査の必要」より)を果たすことができるのです。


 監査手続それぞれの方法論としての説明は、内部監査の書籍をご覧ください。実際に業務監査等でどの監査手続を選択するのかを検討する際は、単に方法・手段として考えるのではなく、その方法・手段を選択することでどのような監査結果を得られるのかを想像しながら選択することをお勧めします。そうすることでその監査結果は、皆さんの会社の企業価値の向上と発展に大いに貢献できるものになるでしょう。そういう内部監査の皆さんがいる会社は、とても素敵ですね。








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当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、


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