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管理系部門がIPO準備でやること Part.13 -予実管理②-

  • 執筆者の写真: 長嶋 邦英
    長嶋 邦英
  • 9月28日
  • 読了時間: 7分

 「管理系部門がIPO準備でやること」について、数回に分けて説明・ご紹介しています。

 今回は、特定の部門・部署ではなく、予実管理の業務②です。




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予実(予算実績)管理は大切な業務②

 以前の記事「管理系部門がIPO準備でやること Part.11 -予実管理編-」で、予実(予算実績)管理がいかにIPO準備期の会社において大切なのか、難しいものなのかを、皆さんと一緒に考えてみました。ただ、この予実管理はIPO準備期の会社だけが大切で難しいものというわけではありません。上場会社、未/非上場会社においても大切で難しいものです。なぜなら、上場会社では期初等に開示している事業計画の進捗状況を適宜開示しており、予実管理から導き出す業績予想はステークホルダー等からの評価を受けるために行なっていると言っても過言ではないからです。ですから予実管理は正確性と機密性を継続的に保つ必要がある、大切な業務であると考えます。

 今回の記事は、IPO準備期の会社に特化して予実管理とその業務について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。


 まずはIPO準備期の会社にとって予実管理がどのくらい/どのように大切な業務なのかを考えてみます。これは上場会社の皆さんにとっては十分すぎるくらいご存じの内容です。

 予実管理とは、予算と実際に達成された実績を継続的に比較・分析することであることは文字通りです。予算の中には売上、原価、経費、利益等の各予算があります。それぞれの中身については、業種によって多岐にわたります。例えば商品在庫を抱える必要のある業種であれば、在庫(高)予算を立てる必要もあります。(※在庫予算を原価予算に含めるケースもあります)

 設立からの年数によっても違いますが、IPO準備期の会社としてもこれまで事業計画・予算計画を策定していたでしょう。IPO準備にあたっても今までのような事業計画を策定していれば良いと思われるかもしれません。そのつもりで主幹事証券会社に提示してみると、意外に渋い反応を受けたというご経験があると思います。その原因はIPO準備各社によって違いはありますが、よくあるケースとして多いのは、その事業計画・予算計画から成長可能性・継続性の見え方が薄いとか、合理性に乏しいなどです。そのように主幹事証券会社から指摘されてしまうと、さらに見栄えの良い(悪く言えば「盛ってしまう」)事業計画・予算計画を策定してしまいがちです。特にグロース市場への上場の場合は成長可能性が重視されますので、上場時に「事業計画及び成長可能性に関する説明資料」を開示することから、特に思い入れが強くなってしまうのも仕方ないと思います。ただし、その際は前述の説明資料を見る側であるステークホルダー等の「見る目」のことも忘れずにお願いいたします。見る側はかなり冷静です。例えば、上場準備以前から成長著しい会社であれば、多少「盛った」事業計画・予算計画でも許されるかもしれません。ただし、その中でいままでなぜ著しい成長ができたのか、その成長はどのような背景等があるから継続して成長できるのか、その成長を支える投資計画や資金計画等があるのか。このような会社なりの分析と裏付けが必要であり、見る側はその点を見ます。なぜなら、見る側が上場したばかりの会社の「企業価値」を判断するとき、まずはその会社なりの分析と裏付けを判断するしかないからです。


 ですから、IPO準備期の会社にとって予実管理がどのくらい/どのように大切な業務なのかといえば、社外/対外に開示される資料等の根拠としてどのような分析力を持ってどの程度準備し、事業計画・予算計画で示している数字たちが正確で、これらを踏まえたうえでその会社の成長可能性、継続性、合理性を示せるのかが問われる、とても大切な業務であると言えるのではないでしょうか。



予実管理の難しさ②

 予実管理の業務は、会社の成長の過程を月次・四半期次・年次で、業種によっては日次で確認することが求められる業務であると以前の記事でご紹介しました。そのため、別の主業務の片手間で予実管理の業務を行うのは、相当難しいと思います。とはいえ、設立して数年でIPO準備の会社にとって予実管理の業務のみのために人材を採用するとなれば、金銭的な負担になると思います。また、以前の記事「内部監査の在り方Part.16 -事業計画②-」でご紹介したとおり、内部監査の立場からみても予実管理の業務については予算・実績の数値情報は財務報告に直結する情報であるため、その情報たちの収集・管理・共有の状況はガバナンス・コンプライアンス・情報セキュリティ等の観点で監査し、正確性と機密性を保つ必要があることからどうしても注目しなくてならない業務になります。ですから、できる限り予実管理の業務経験のある人材を確保していただき、上場会社として質の高い予実管理を行なっていただくことをお勧めします。


 このようにお勧めするのも、じつは適時開示閲覧サービス(TDnet)でまたもや「不適切な会計処理」による内部統制の不備の事案が掲出されていたからです。調査報告によるとこの事案では、子会社は親会社(上場会社)からの営業黒字達成という「プレッシャー」を感じ、棚卸資産等の過大計上について不適切な会計処理を行なって営業利益の積み増しを行なっていたというものです。事業計画(予算計画)に対して未達成であればこれに対するプレッシャーがあるのは、もちろんです。ただし、そもそもその未達成の原因が何なのか。事業計画の根本に営業利益を重視するあまり、その他の予算計画に狂いが生じていないのか。事業計画の策定は机上の作業ですから、事業の進捗状況によっては期中に微調整を加えることはあります。適時開示するかどうかは、開示基準に従って行うだけです。前述の不備事案は子会社で行われた不祥事ですので、親会社では見抜くことが難しかったかもしれません。まして予実管理の業務担当者は数字しか見られませんので、さらに難しいでしょう。ただ、ここで皆さんは、予実管理の業務は「数字だけを見ていればよい業務ではない」ことにお気付きだと思います。勘の良い予実管理業務の経験豊富な皆さんであれば、ちょっとした数字の不自然さに気付くかもしれません。その場合は多少の不自然さ/違和感であっても上長等(管理部門担当役員など)や内部監査部門に報告・連絡することが必要だと思います。予実管理の業務担当者がどこまで踏み込んだことをするのかは微妙ですが、少なくとも前述の不祥事事案のように適時開示するような事態に発展してしまうよりはマシだと考えます。このあたりは皆さんの会社の業務分掌、人間関係等によって対処の仕方がいろいろあると思いますので、このような場合でのインシデント対応の連携等の方法を管理部門内で協議することをお勧めします。



 IPO準備期の会社の管理系部門は、IPO準備中のことだけでなく上場後のことも見据えて今の準備タスクを達成していかなければなりません。なぜなら、IPO準備期に行なっている業務・作業のうちの大半は上場後にはガラッと変わるからです。そのひとつに予実管理があります。予実管理で集計された数字はその後適時開示(決定事実/発生事実)する必要があるため、合理性と精度が重要です。さきほど不祥事等のインシデント対応を引き合いに出して社内関係者や管理系部門内での連携することをお勧めしましたが、予実管理の合理性と精度は予実管理の担当者だけでは難しいからです。

 ぜひ社内でいろいろ検討することをお勧めします。






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 この機会に、ぜひCorporate部門のあり方、必要性をご理解いただき、Corporate部門の業務体制構築/再構築、業務支援をご検討ください。


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