内部統制に向き合う Part.16-内部統制基本方針-
- 長嶋 邦英

- 2月1日
- 読了時間: 8分
2023年04月内部統制報告制度(J-SOX2023改訂版)が15年ぶりに改訂されて内部統制が様変わりし、皆さんの会社では豊富な知識と蓄積された経験をもとに日々内部統制を進化させていることと思います。その知識と経験をいったん振り返って整理し、さらに実践に役立つ戦略・戦術として活かすことを考えてみたいと思います。
今回は、全社統制(以下「CLC」といいます)に関連して内部統制基本方針です。

【参考となる書籍・資料】
・財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(企業会計審議会・金融庁)
・財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準(企業会計審議会・金融庁)
・今から始める・見直す 内部統制の仕組みと実務がわかる本(浅野雅文著・中央経済社)
・監査・保証実務委員会報告第82号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」(日本公認会計士協会)
内部統制基本方針の捉え方
前回の記事「内部統制に向き合う Part.15-全社統制②-」までのところで、内部統制の各統制(CLC, FCRP, PLC, ITGC, ITAC)をいろいろな角度で皆さんと一緒に考えてみました。ご紹介した内容もそうですが、それ以外の目線・角度、評価の方法、ひと工夫などまだたくさんあると思います。じつは私も連載していくうちにいろいろ思い付いたことがあります。それについては改めてご紹介したいと思いますし、皆さんにおいても私の記事を参考にする/しないは別にして、いろいろと考えて思い付いたことをぜひ実践していただきたいと思います。
さて今回の記事では、全社統制(CLC)の延長戦として内部統制基本方針について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。この内部統制基本方針の呼び方ですが、多くの上場会社でいろいろな呼び方をしております。(例:「内部統制の基本方針(サイボウズ株式会社)」、「内部統制システムの整備に関する基本方針(NTT株式会社)」など)この記事では「内部統制基本方針」に統一します。
なぜ今回の記事で全社統制(CLC)の延長戦として内部統制基本方針について取り上げるのかというと、CLCの整備/運用評価を行うとまず初めにある統制項目に「経営者は、信頼性のある財務報告を重視し、財務報告に係る内部統制の役割を含め、財務報告の基本方針を明確に示しているか。」(CLCの42項目・参照:「財務報告に係る全社的な内部統制に関する評価項目の例」(96-98ページ))がありますので、上場会社はまずこの統制項目について評価することとなるからです。これについて、皆さんの会社でどのような点を確認し、評価しているのかが気になりました。内部統制基本方針は文字通り「財務報告の基本方針を明確に示している」ことが求められているので、上場会社のコーポレートサイトに明示されています。ここで1点疑問に感じました。それは経営者は財務報告の基本方針を明確に示していることについて評価しているのですが、その経営者はいったい「誰に対して」明示することを求めているものなのかが示されていないことです。ステークホルダーでしょうか。ステークホルダーを含む世間一般に対してでしょうか。例えば、上場会社各社は後者のステークホルダーを含む世間一般に対して明示するためにコーポレートサイトという手段で示しているのだとします。すると、もう1点疑問に感じたことがあります。それは、もし「ステークホルダーを含む世間一般に対して」であれば、社内の従業員等もステークホルダーに含まれますが、社内の従業員に対して内部統制基本方針をどのように、どの程度明示しているのか、という点です。この点については各社バラバラだと思います。従業員に対しても内部統制基本方針を明示し、これについての理解を深めてもらうような周知等を行なっている会社がどのくらいあるのか。おそらく、明示して理解を深めるための周知を行っている会社が大半だとは思いますが・・・。そうすると、統制項目に戻りますが、「経営者は、信頼性のある財務報告を重視し、財務報告に係る内部統制の役割を含め、財務報告の基本方針を明確に示しているか。」に対する評価が問題なく「適合」とすることができる会社は、もしかしたら少ないかもしれません。内部統制基本方針は「信頼性のある財務報告を重視し、財務報告に係る内部統制の役割」を会社の方針・姿勢等を踏まえて策定されるものですが、それは対外的なもののためだけでなく、その会社の従業員等がその内容を理解し、社内の部門、業務の隅々まで深く浸透している状態であることを、J-SOXは求めていると考えます。そのように内部統制基本方針を捉えてみると、このCLCの42項目の一番最初の統制項目についての評価は、皆さんの会社にとって最重要項目かもしれません。
内部統制基本方針のポイントは「その会社らしさを表す」
内部統制基本方針の内容は、先ほどのCLCの42項目の一つ目に示されているとおり、「経営者は、信頼性のある財務報告を重視し、財務報告に係る内部統制の役割を含め」ているものです。項目は会社法施行規則第100条に示されているとおりなのですが、その項目を見ると「信頼性のある財務報告」をどのように・どの程度重視しているのか。また「財務報告に係る内部統制の役割」をどのような仕組みで・どのように取り組んでいるのかを明確に示すことができるような項目になっています。ところが、多くの上場会社の内部統制基本方針を拝見しますと、同じような表現と内容になっている印象を持ちます。もちろん項目は会社法施行規則第100条に示されているとおりに開示する義務があるのですが、問題はそれぞれの項目の内容です。それぞれの上場会社において、その会社の「信頼性のある財務報告」をどのように・どの程度重視しているのか。また「財務報告に係る内部統制の役割」をどのような仕組みで・どのように取り組んでいるのかを示しているのかを明確に示している会社は少ない印象です。今回、特にとても素晴らしい内容の内部統制基本方針のひとつの例として、帝人株式会社の「内部統制システム構築の基本方針」をご紹介します。この会社の「信頼性のある財務報告」をどのように・どの程度重視しているのか。また「財務報告に係る内部統制の役割」をどのような仕組みで・どのように取り組んでいるのかを示しているのかを具体的に示しており、それは読むと一目瞭然です。誰(部門・責任者の明示)が、どのように、どのような仕組み(体制、組織、規程集など)で、どのように取り組んでいるのかが明示され、会社の方針・姿勢がよくわかります。これがまさにJ-SOXで求められているものだと考えます。
この項のテーマに挙げましたとおり、内部統制基本方針のポイントは「その会社らしさを表す」ことだと思います。以前の記事でもご紹介しましたが、J-SOXは「このとおりにやれば良い」とか「この程度整備すれば大丈夫」というものはありません。それぞれの上場会社がJ-SOXをどのように遵守するのか、その内部統制体制の整備/運用の内容はそれぞれの上場会社が決めて実施しなければならないものです。その姿勢を表すものとして内部統制基本方針があります。各項目の内容はすべて会社の姿勢です。会社の姿勢を表すはずのものが、どこかにあるような「雛形」のままだった場合、ステークホルダーはどのような印象を持つでしょうか。
今回は内部統制基本方針について、皆さんと一緒に考えてみました。
内部統制を紹介する書籍をいろいろ読んでいるのですが、この内部統制基本方針について詳しく説明しているものがあまり多くない印象です。また、内部統制体制の構築(整備)がうまく進まないとか運用がうまく実施できないというIPO準備期の会社や上場して間も無い会社の皆さんがあるかと思いますが、そのときはぜひ会社の「内部統制基本方針」を再度読み返してみてください。会社の姿勢を表しているものなのか。その内部統制基本方針を従業員等の皆さんに開示し説明して、理解を得ることができるものなのか。そのとおりに運用できるものなのかを、社内で検討することをお勧めします。CLCの42項目の一番最初にこの内部統制基本方針のことが問われているのには、必ず理由があります。それは、皆さんの会社の内部統制基本方針の整備と運用が完全に実施することでJ-SOXの目的が達成できることを、J-SOXが示しているからです。ですから内部統制基本方針がとても大切であり、内部統制基本方針にその会社らしさを表す必要があると考えます。
改めて、ぜひ皆さんの会社でも内部統制基本方針の再確認・再検討をお勧めします。
当社が提供するサービスとして
当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、
IPO準備中企業の内部統制体制の構築とその業務内容の確立をサポート支援いたします。
上場企業の内部統制体制の再構築、業務内容の改善をサポート支援いたします。
IPO準備中・上場企業の内部統制にかかる業務の業務委託受託先(外部)として業務遂行いたします。(*内部統制責任者として、社内に1名選任をお願いします。)
この機会に、ぜひ内部統制のあり方、必要性をご理解いただき、内部統制の体制構築/再構築をご検討ください。



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