今回は、内部監査年間計画を通して内部監査の在り方を考えて見たいと思っております。
内部監査年間計画の立て方で、内部監査の存在感は変わります。この辺り考えてみましょう。
年間計画は内部監査の要(かなめ)
03月期を決算期としている会社の内部監査の皆さんは、もうすでに内部監査年間計画を策定済みのことと思います。もし、いまから策定されるようでしたら、ご参考のひとつになれたら嬉しいです。
と言うのも、内部監査年間計画は内部監査の皆さんにとっての行動計画であり、その行動によって皆さんの会社の企業価値を大きく上げるための重要な働きとなるからです。つまり、内部監査年間計画は内部監査の皆さんにとっての要(かなめ:最も大切な部分。要点。)です。内部監査は会社の業績に大きな影響は無い、業績に貢献できないと思われることがありますが、昨今の内部監査に関する動向をみましたら、そのような懸念はなくなります。むしろ内部監査の皆さんの働きよって、少なくとも会社の企業価値を損なうことがなくなるというアシュアランス(保証)の側面で会社に大きく貢献しています。それくらい内部監査の皆さんの働きは大切ですし、その内部監査の皆さんが立てる内部監査計画は重要です。
それでは、その内部監査計画はどのように策定したらよいでしょうか。押さえておくポイントをいくつか挙げてみます。
内部監査計画は、会社の事業計画に沿ったかたちのものか。
内部監査計画は、会社のリスク・コントロールに沿ったかたちのものか。
内部監査計画は、監査テーマ・監査の時期(タイミング)を外していないか。
今回は、上のポイントについてご紹介します。
【ポイント1】事業計画と内部監査計画をリンクさせる
内部監査の皆さんはすでにご存知だと思いますが、内部監査計画は皆さんの会社の事業計画に沿ったかたち・リンクさせることが大切です。例えば、皆さんの会社の事業計画に新規サービスの立ち上げ・ローンチがあるとします。そのとき内部監査計画では次のような監査テーマ、監査項目が挙げられると考えます。いくつかご紹介します。
<監査テーマ・監査項目の例>
販売計画①:新規サービスは事業計画・予算計画(収支共に)を盛り込んだかたちになっているか。その事業計画・予算計画の根拠となる資料はあるか。
販売計画②:新規サービスのローンチに必要な許認可を得ているか。許認可に必要な資料はあるか。
販売計画③:新規サービスは特許・商標・意匠権等の申請を行っているか。新規サービスは他社の特許・商標・意匠権等を侵害していないか。これらを確認した資料はあるか。
予算計画①:新規サービスに係る支出のうち、原価に関する算出は適正・妥当なものか。仕入等に関係する取引先の調査(反社、与信を含む)は適正に行われたか。
予算計画②:新規サービスに係る特定の支出関連の勘定科目(e.g. 広告宣伝費)について、社内で取引先からの見積書等の入手、その見積りに対する妥当性の判定等の資料はあるか。その妥当性の判定等は適正に行われたか。
人員計画①:新規サービスに必要な人員は充足しているか。人員計画は人員の異動、新規採用等を考慮した内容となっているか。
人員計画②:新規サービスの立ち上げ・ローンチに伴う新規部門の設置、異動がある場合、内部統制(PLC)上のキーコントロールに当たる業務を担当する従業員が異動することもある。この場合の後任の従業員への引継ぎ等を行なっているか。欠員が生じていないか。
その他
上の監査テーマ・監査項目はごく一部です。その新規サービスの内容等によってはいくつでも挙げられると思います。
そして、リンクさせることのポイントで重要なのは、その新規サービスへの内部監査をいつのタイミングで実施するかです。新規サービスの内容等によっては、新規サービスに必要な規程・マニュアル等の整備や人員の配置・採用等が行われて実務が可能した後に内部監査を実施した方が良いケースや、新規サービス立ち上げ・ローンチの準備段階から並走して内部監査とアドバイス(助言)業務を行うケースもあります。内部監査を実施するタイミングを間違えてしまうと、未整備/整備中のため監査ができない、又は整備を怠っていたことを内部監査の実施で発覚したということも考えられます。このようなことが発生しないようにするためにも、内部監査計画を策定する際は、ぜひ事業計画が策定される前から関係部門と連携して監査実施のタイミングの調整と監査テーマ・監査項目の洗い出しを行なっていただくことをお勧めします。
【ポイント2】リスク管理と内部監査計画をリンクさせる
これについては以前の記事「内部監査の在り方 Part. 01 - 内部監査とリスク管理との連携の重要性」でもご紹介しておりますので、以前の記事もご参照ください。
内部監査の皆さんはすでにご存知だと思いますが、内部監査計画は皆さんの会社のリスク管理に沿ったかたち・リンクさせることが大切です。リンクさせるポイントとしては、リスクの内容と影響度です。例えば、リスクの影響度がいくら高いといっても、その内容として内部監査を実施するには規模/範囲が大きすぎるとか、外部専門家によるチェック・調査を実施する方が効果的である等の場合は、内部監査は適当ではないかもしれません。逆に、リスクの影響度が低いといっても、その内容として内部監査を実施することで迅速かつ的確に改善することができる・効果的である等の場合は、内部監査計画に盛り込むのが良いでしょう。
また、リスク管理を担当する部門・委員会において調査・改善行動等を実施する場合もあります。これと連動・並走するかたちで内部監査を実施するのが効果的なケースが有れば、その逆で、リスク管理を担当する部門・委員会において実施する調査・改善行動等と内部監査が連動・並走しない方が良いケースもあります。この連動・並走をする/しないは、そのリスクの内容・影響度等によりますので、ぜひリスク管理を担当する部門・委員会と連携して内部監査計画を策定することをお勧めします。ただし、リスク管理と内部監査の連携はとても重要ですが、内部監査はリスク管理を担当する部門ではありませんのでリスク管理を担当する部門・委員会の代替にはなり得ません。この点をご注意ください。
【ポイント3】内部監査実施のタイミングは重要
こちらはポイント1で触れましたとおり、内部監査をいつのタイミングで実施するかは非常に重要です。さきほどのポイント1では事業計画に合わせるかたちをご紹介しましたが、ポイント3では少し俯瞰するかたちとなりますが、三様監査(監査役/監査等委員会・監査法人)との連携や会社の中期計画と連動させる監査中期計画との兼ね合いで、当期の内部監査計画を策定する際に考えるポイントとなります。
会社に中期計画があるように、内部監査にも監査役/監査等委員会と連携して中期的な目線で監査計画を策定する必要があります。これは、会社が中期計画に基づいて業績向上等会社の成長を目指しているわけですから、監査もこれに連動して、その成長に合わせるかたちの監査を実施するものとなります。これは以前の記事「- IPO準備の内部監査_上場前と後での内部監査体制の違い -」でご紹介しましたとおり、内部監査は連続性が必要であり、その連続性も、むやみに高いレベルを求めるものではなく、その会社の「体型に合った」内部監査を行うことが必要です。そのため、上場前であれば上場前に行うべき内部監査がありますし、上場後は会社の成長やその成長によって迫るリスクに対抗する力の一翼を担うような内部監査が必要となります。その内部監査の実施のタイミングが外れてしまうと、いくら精度の高い内部監査を実施しても会社の成長への貢献度は低くなってしまうかもしれません。
今後は監査法人も内部統制の観点で、皆さんの会社の内部監査計画とその実施状況を注視することになりますので、内部監査計画を策定する際は十分な検討の時間と場を設けることをお勧めします。上の3つのポイントを参考にしていただけたら幸いです。
当社が提供するサービスとして
当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、
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上場企業の内部監査体制の再構築、業務内容の改善をサポート支援いたします。
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この機会に、ぜひ内部監査のあり方、必要性をご理解いただき、内部監査体制構築/再構築をご検討ください。
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