IPO準備会社と上場会社。それぞれ立場は違いますが、意外にもその悩みどころや解決策に共通点があります。ここではその " ひと工夫 " をご紹介します。
今回は、「リテラシー教育」のもうひとつのひと工夫です。
会社は「リテラシー教育の場」②
皆さんの会社でいろいろな社内教育が実施されていると思います。例えば、ハラスメントやコンプライアンスなど、階層ではマネジメント(特に管理職向け)などがあり、これらのための社内教育・学習システムサービスも多いです。ただ、ここで少し気になるのは、ハラスメントなど法令により会社に義務付けられている社内教育は厚生労働省の「あかるい職場応援団」サイトを参照するなど画一的な内容の社内教育を実施することでよいかと思いますが、コンプライアンスやリテラシーに関する教育は他社と同等の画一的な内容では不十分ではないかということです。例えば、コンプライアンスは「法令遵守」ではありますが、皆さんの会社ごとに遵守されるべき法令に違いがありますし、業種・業界にある業界ルールが存在することも考えられますので、いわゆる一般論のようなコンプライアンス教育を従業員の皆さんに実施しても、深い理解と適切に活用して実行してもらえるようになるのは時間が必要、又は難しいかもしれないと思います。会社が教育するからには、従業員の皆さんに深く理解して・適切に活用して・実行してもらう必要があります。そのためには、画一的な内容ではない、会社の現状・実情に合った内容の社内教育が求められると考えますし、そうなるようまずは理解して実行してもらいやすい環境作りが必要だと考えます。そこで、まず実施する社内教育として「リテラシー教育」をお勧めします。
リテラシーとは「読み書き能力。また、与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能力。応用力。」(参照:小学館・デジタル大辞泉)の意味のようです。今回の記事では学習した内容を実行できる力のことをリテラシーと言い換えます。
リテラシーは適切に理解し解釈し分析しそれらを記述・表現する力なので、会社としては社内教育を単なる知識を学ぶ場ではなく、学んだ知識を業務において実践で使いこなし、経験を積んでもらうことを目的としていると考えます。ですから学校のように単に学ぶだけではなく、適切に理解し解釈し分析しそれらを業務に活かしてもらう「リテラシー」の力をつけてもらいたいと考えているでしょう。このように考えたうえで、皆さんの会社で実施している教育・研修を振り返っていただけたら幸いです。
その教育は「モラル教育」になっていませんか?
例えばコンプライアンス教育の中で、「法令として定められているもの(又は禁じられているもの)は、普通に考えて遵守して当然だ」というように教えていませんか?「普通に」「当然」と言われている表現を避けることをお勧めします。なぜなら、その法令に定められている条文が広く知られていないことがありますし、特に新卒・新入社員はその法令の存在自体を知らないことがあります。また聞く側の従業員としては、そう聞いて「知らなかった」と言いづらいかもしれませんし、知らなかったことで萎縮してしまうかもしれません。私が社内教育で講師を務めさせていただくとき、「普通に」「当然」の表現は使わないようにしています。受講する従業員の皆さんは一律に同じことを知っているわけではありませんし、中には諸外国から志しをもって日本企業に就業している方々もいらっしゃいます。もちろん法令、文化、生活習慣等様々なものが違いますので、その方々に普通、当然という言葉を使うことは許されません。
コンプライアンス教育は従業員の皆さんに対し法令・社内規程等ルールを守る意識を高めるための教育です。倫理(感)や道徳を身に付けるモラル教育ではありません。従業員の皆さんに法令・社内規程等ルールを守る意識を高めてもらうのであれば、その法令・社内規程等ルールの存在を伝え、できればそのルールができた経緯や背景、根拠など、そのルールが在る理由を説明することでルールを守る意識を高めていく必要があると考えます。またルールを守る意識は会社によっても違いますし、社内でも各部門・部署によっても違いがあるかもしれません。そう考えると、コンプライアンス教育は前項で述べたように画一的な内容では不十分ですし、ルールを守る意識を高めるためには少なくとも年1回・複数年実施したり、新卒・新入社員、管理職など階層ごとに実施する必要があるかもしれません。それに座学だけでなく、確認テストを実施するなどしてルールを守る意識を深める必要もあるかもしれませんので、ぜひ皆さんの会社の今の状況に合った内容に毎年カスタマイズするなどをお勧めします。特にIPO準備期の会社、上場会社では教育内容のクオリティにもこだわっていただきたいです。
意識を高める教育という意味では、リテラシー教育も同様です。
正しい情報・知識を適切に理解し解釈し分析しそれらを業務に活かしてもらうためにリテラシー教育をするわけですから、ここでも「普通に」「当然」の表現は当てはまりません。それに、このリテラシー教育こそ会社によって規模(従業員数、売上高等)や社歴等がまったく違いますので、他社と同等の画一的な内容で十分な教育内容ではありません。必ず皆さんの会社の今の状況に合った内容でなければならないと考えます。そのため、もし社内教育を外部委託する場合は、必ず秘密保持契約書(NDA)を締結のうえ、会社の規模や社歴、今の社内の状況(*もちろん機密情報は除きます)を外部委託先に伝えながら一緒に内容を作ることをお勧めします。
社内の様々な環境・状況こそが社内教育
会社はいろいろな考えを持って、従業員に社内教育を実施していきます。業績向上もありますし、不正行為等不祥事のあった会社ではそれを改善するために社内教育を実施することもあるでしょう。しかし、それだけではありません。会社は世間から成長することを求められています。上場会社であれば、株主等ステークホルダーから求められています。実際に成長している必要がありますし、さらに成長性を見込める状況であることも求められます。その成長とは、業績だけではありません。社内外の経営環境やその会社が置かれている状況など、いろいろな要素が考えられます。上場会社でESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))に注目しているのもそのひとつです。ただし、例えばそのESGがとても素晴らしい内容であっても、社内の様々な環境や起こっている状況が芳しくなければとてもさみしいです。社内の様々な環境が整い、不祥事が発生する可能性が非常に低い整然とした業務遂行状況が確立されれば、世間やステークホルダーも安心する会社になり得ると思います。そのためには多種多様の社内教育に多くの時間を割く前に、まずはリテラシー教育を実施して従業員一人一人に社内の様々な環境を自主的に整える考えを養い、不祥事やハラスメント等が起きない・起こさせない、従業員同士が尊重し合う環境と業務遂行状況を社内に作っていくことをお勧めします。
その昔「部下は上司の背中を見て育つ」と言われた時代がありましたが、いまでは「従業員は会社・上司・同僚を見て、一緒に育つ」が当たっているかもしれません。それに、従業員が「一緒に育ちたい!」と思ってもらえる会社・社内環境は、とても素晴らしいです。雇用の流動化と言われている時代ですが、従業員の入れ替わりが激しく勤続年数が極端に低いのはとても厳しいです。ぜひこの機会に社内教育を見直して、会社も従業員も一緒に成長できる社内環境を作っていくことをお勧めします。
当社が提供するサービスとして
当社が提供する「Corporate(管理系)部門 業務支援」サービスでは、
IPO準備中企業のCorporate部門の業務内容の確立をサポート支援いたします。
上場企業のCorporate部門の再構築、業務内容の改善をサポート支援いたします。
IPO準備中・上場企業のCorporate部門にかかる業務の業務委託受託先(外部)として業務遂行いたします。(法務業務支援など)
この機会に、ぜひCorporate部門のあり方、必要性をご理解いただき、Corporate部門の業務体制構築/再構築、業務支援をご検討ください。
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