IPO準備会社と上場会社。それぞれ立場は違いますが、意外にもその悩みどころや解決策に共通点があります。ここではその " ひと工夫 " をご紹介します。
今回は、経営会議についてのひと工夫です。
経営会議とは?
皆さんの会社の経営会議はどのような運営を行なっていますか?
経営会議の目的として、例えば業務執行に関する重要事項を社長、他の取締役等が出席してこれを審議し決定する機関と定めるのが多いでしょう。しかしその実態をみると、職務権限のうえでは社長が決裁できるはずの事項を経営会議で審議することを経由して決裁したり、審議ではなく全社的に周知徹底する意味で経営会議の協議事項に挙げられたりするなど、規程で定めた経営会議の目的から少々外れてしまうケースが見受けられます。「機関」はあくまで機能であり目的ではありませんが、機能が先行してしまい目的を果たせなくなってしまうことがあるのかもしれません。せっかく経営会議規程や会議体規程等に経営会議の目的をしっかりと定めても、実態が合っていない又は手続きの一環として経由させるだけになってしまうのは大変残念なことです。特にIPO準備会社の場合は、監査法人、主幹事証券会社による内容チェックが入りますので、機能ではなく目的をしっかり果たせているのかを十分に気を付けたいところです。
経営会議では、会社の事業に関する方向性等を十分に協議しスピーディな判断を行うことが求められるのですが、中々うまく運営ができないのが悩みどころです。
そこで、いくつかのひと工夫をご紹介します。
【ひと工夫1】審議事項、決定事項の範囲をハッキリ決める
さきほどご紹介しましたように、経営会議の目的として業務執行に関する重要事項を社長、他の取締役等が出席してこれを審議し決定する会議体であるとした場合、その経営会議の議題と取締役会の決議事項とでハッキリとした区分ができていますか?よく見受けられるのは、皆さんもご存知のとおり取締役会の決議事項は会社法に定められていますが、その取締役会の決議事項はそれだけとし、それ以外の事項は経営会議で審議して決定するケースです。一見明確で合理的に見えますが、実際にやってみるとそれ以外の事項としている部分が多過ぎてしまいそのとおりにはいかないことが多いです。
見方を変えてみますと、日本取引所「コーポレートガバナンス・コード」(以下「CGコード」といいます)では取締役会の責務を次のように示しています。
第4章 取締役会等の責務 【基本原則4】 上場会社の取締役会は、株主に対する受託者責任・説明責任を踏まえ、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るべく、 (1)企業戦略等の大きな方向性を示すこと (2) 経営陣幹部による適切なリスクテイクを支える環境整備を行うこと (3) 独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うこと をはじめとする役割・責務を適切に果たすべきである。 こうした役割・責務は、監査役会設置会社(その役割・責務の一部は監査役及び監査役会が担うこととなる)、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社など、いずれの機関設計を採用する場合にも、等しく適切に果たされるべきである。
(出典:CGコード14ページ)
皆さんの会社にも非業務執行取締役(監査等委員、社外取締役を含む)を選任していると思います。非業務執行取締役は高いチェック機能(CGコードでは「実効性の高い監督」)という大きな役割を持っています。その高いチェック機能の役割を果たしていただくため、非業務執行取締役の皆さんには業務執行に関する重要事項についてもよく理解していただくことが必要です。会社としては非業務執行取締役の皆さんの客観的・独立的な立場で自らの知見(専門性)を踏まえて会社にとって有意義な意見等を出してもらうことが必要であると考えるでしょう。つまり、コーポレートガバナンスの観点では取締役会こそ会社法で定められた事項だけでなく、企業戦略上の大きな方向性やリスク・コントロール等広い範囲で議題を挙げて意見交換し、決定すべきことがあれば決定することが必要です。しかし、取締役会の時間は限られています。非業務執行取締役には会社の経営だけでなく業務遂行に関しても理解してもらいたいとか幅広い経験・知見を踏まえた助言等を頂きたいと考えていても、決議事項・報告事項以外の議題をいろいろ盛り込むにも限界があります。
そこで、まずは取締役会と経営会議それぞれの会議の目的と審議・決定する事項の範囲、境界線をハッキリと区分し、取締役会と経営会議それぞれで審議・決定すべき事項を明確に決めることをお勧めします。これを行うことで、審議・決定すべき権限者は十分な事前準備を行うことができますし、会議中においては慎重な審議を行いつつも迅速かつ的確な決定を行うことができます。これと並行して、取締役会規程と経営会議規程これに職務権限規程を連動させて取締役会・経営会議・稟議で決裁可能な役職員の権限を明確にし、実態との乖離が無いように定期的に点検することも忘れずに行なってください。取締役会と経営会議それぞれの会議の目的と審議・決定する事項の範囲・境界線をハッキリと区分し定期的に点検することで、それぞれの会議体を単なる機能として使うのではなく会議の目的を重視した業務の一つとして捉えていただくことをお勧めします。これによって内部統制の目的である「業務の有効性及び効率性」を達成する第一歩を踏み出せるでしょう。
【ひと工夫2】経営会議議事録は大切です
皆さんにとっては釈迦に説法ですが、会議体の議事録特に経営会議の議事録は大切です。単に記録を残すことも大切ですが、その内容(どのような議題が、いつ、どのような意見交換があり、どのような経緯を踏まえて決議されたのか等)をある程度詳細に記録することをお勧めします。その理由は、経営会議議事録を非業務執行取締役の皆さんにも回付・共有するためです。なぜ非業務執行取締役の皆さんにも回付・共有する必要があるかというと、さきほどご紹介したCGコードに、取締役会は会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図るために、独立した客観的な立場から、経営陣(執行役及びいわゆる執行役員を含む)・取締役に対する実効性の高い監督を行うことが求められているからです。その実効性の高い監督の範囲は、取締役会の中だけではなく各取締役の業務執行状況やもちろん経営会議にも及びます。しかし、経営会議でどのような審議・決定が行われているのかあまりわからない/不明であるとしたら、実効性の高い監督は難しいでしょう。その議事録の内容も、詳細で理解しやすい内容でなければ、これも実効性の高い監督は難しいのではないでしょうか。
また、経営会議議事録を非業務執行取締役の皆さんにも回付・共有することは、実効性の高い監督を行なってもらうだけでなく、会社にとってメリットもあります。それは、非業務執行取締役の皆さんは専門性だけではなく、幅広く深い経験や高い知見を持っていらっしゃいます。業務執行上の難問、障害等を解消できるアイデアや助言等(経験・知識だけでなく人脈等も含む)を持っているかもしれません。取締役会のメンバーの役割・責務に「会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を促し、収益力・資本効率等の改善を図る」ことを求めています。つまり、非業務執行取締役はチェック機能を行うだけではなく、取締役会のメンバーとしてその役割と責務を他の業務執行取締役と同じく「等しく適切に果たす」ことが求めているのです。このように考えると、経営会議議事録を非業務執行取締役に回付・共有しないのはもったいないことなのです。
会社としては、実効性の高い監督を求めるためにも、また専門性・幅広く深い経験・高い知見を踏まえた会社にとって価値のあるアイデアや助言等を得るためにも、ぜひ経営会議議事録を大切にしていただき惜しみなく取締役会のメンバー全員に回付・共有することをお勧めします。
経営会議の運営は、その事務局を担う管理系部門の皆さんにとっては毎回頭を悩ませていることでしょう。特に、業績を順調に伸ばしている会社や大きなチャレンジ精神を持った会社では、経営会議での議題の数や時間配分、度重なる時間延長等は大きな問題です。ただし、これについてのひと工夫はありません。皆さんの会社の中で試行錯誤していただくしかありません。逆を言えば、正解は無いということです。時間延長したくないばかりに議題を減らしたり、協議する時間を減らしたりすることは、会社にとって将来的に大きな損失を招く恐れがあります。効率性は二の次に置き、合理的で効果的な経営会議を運営できるように検討するのが良いでしょう。
当社が提供するサービスとして
当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、
IPO準備中企業の内部監査体制の構築とその業務内容の確立をサポート支援いたします。
上場企業の内部監査体制の再構築、業務内容の改善をサポート支援いたします。
IPO準備中・上場企業の内部監査業務の業務委託受託先(外部)として業務遂行いたします。(*内部監査責任者として、社内に1名選任をお願いします。)
この機会に、ぜひ内部監査のあり方、必要性をご理解いただき、内部監査体制構築/再構築をご検討ください。
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