top of page
  • 執筆者の写真長嶋 邦英

IPO後の内部監査の役割について

IPO前と後の内部監査の業務内容に、違いがあることをご存知でしょうか?

結果として「監査報告を出す」ことに変わりはないのですが、その中身は違います。その違いとは?

今回はその内容を説明します。(約5分程度でお読みいただけます。)

IPO後の内部監査について

 IPO後の内部監査の業務・役割について、冒頭申しあげましたように、「監査報告を出す」ことに違いはありません。ただし、その「監査の内容」と「監査報告の記述内容」は大きく違います。



【監査の内容】

IPO前の内部監査の内容は、メインとして2つ。

 (1) 整備状況は整っているか?

 (2) 持続可能なサイクル(PDCAサイクルをイメージしてください)が整っているか?

この2つを監査する理由は、証券取引所による上場審査で次の点を重要視しています。

  • 申請企業の持続可能性

  • 申請企業の成長性の継続可能性

なぜこの2点を重要視するのか?それは、上場企業が持続可能で、成長性も継続可能でないと、株価が上がらず、その影響は他の上場企業にも及ぶからです。逆に言えば、上場企業が持続可能で、成長性も継続可能(さらに成長性が向上)していれば、株価が上がり、その影響は他の上場企業にも及び、市場全体が活況になるからです。

(*ちなみに、決算の数字上で赤字の企業でも上場されているのは、この持続可能・成長性の継続可能な点が評価されているところが大きいからです。)


 ただし、申請企業の持続可能性と成長性の継続可能性を証明するものが無かったら、投資家は判断することが難しいです。そのため申請企業は、上場準備中に内部監査を設置して内部監査を行い、並行して内部統制チームを立ち上げて内部統制体制を構築して内部管理体制を整備します。なお、この内部管理体制は会社の持続/継続可能性のために構築しているので、当然「持続/継続可能なサイクル」も整備することとなります。


 さて、IPO後の内部監査はどうでしょう。

IPO後の内部監査の内容は、メインとして次の2つ。

  1. IPO前に整備した内部管理体制と持続/継続可能なサイクルは正常に運用されているか?

  2. IPO前に整備した内容(又は前年期の運用状況)を踏まえて、改善するポイントはあるか?

ご覧いただいてわかるように、監査の切り口がだいぶ違います。また、この2つに加えて、内部監査は通常の業務監査(例:稟議書監査)やテーマ監査を行い、監査役監査にも、監査役監査補助人として加わったり・・・と業務多忙です!


まとめますと、監査の内容として、IPO前と後の内部監査の目的は次のとおりです。

  • IPO前は、上場基準を満たすための整備状況を内部監査する

  • IPO後は、IPO前に整備したものの運用状況を内部監査する

  • ただし、内部監査の大目的は、会社の持続可能、会社の成長性の継続可能なことを証明するための内部監査を行うこと

*注:証券取引所の上場申請時に、2期分の監査報告の提出が求められます。この監査報告の中でもちろん運用状況の監査報告も入っていますが、あくまで「2期分」ですので、3点目の「会社の持続可能、会社の成長性の継続可能なことを証明する」根拠としては足りない、という認識です。


これらの目的を忘れずにIPO前と後の内部監査を行なっていただきたいと考えます。

また、会社が持続し、成長性も継続すれば、当然に会社規模、売上高の構成比率、人員構成がどんどん変化します。これにあわせて内部監査の監査項目もどんどん変化し、レベルアップすることが必要です。IPO前に構築した体制は、毎年マイナーチェンジ/フルモデルチェンジを繰り返すことになることを覚えてください。


【監査報告の記述内容】

監査している内容が違うので、その報告の記述内容ももちろん違ってきます。最終的に

 「監査結果 : 法令もしくは当社規程に違反する事実は認められない。」

というものになりますが、個別の監査項目とその監査内容は、【監査の内容】に記述のとおり大きく違ってきます。そのため、監査報告の記述内容も違うことになります。

  •  特にIPO後の監査報告では、IPO前に整備した内容(又は前年期の運用状況)を踏まえて、改善ポイントがあったのか?

  • その改善ポイントは改善できたのか?(フォローアップ監査)

  • <補足>その改善は、会社にとってどのくらい有効なのか?(効果測定)

これらを監査報告に記述することとなります。IPO前とはだいぶ違うことが、お分かりいただけるかと思います。



準備期から「IPO後」を意識して

 これまで説明してきましたが、これらを急に行うことは難しいです。内部監査体制を構築すること自体も難しいですし、このような内部監査を受ける側(被監査部門)にも、それ相応の準備と心構え、これに「慣れ」が必要です。これに、IPO前後で内部監査の内容が違ってきますから、被監査部門は混乱するでしょう。

 そのために内部監査は、準備期(できればN-3期)からIPO後を意識して準備し、監査を行い、直前期(N-1期)では被監査部門にも慣れてもらえるよう「IPO後の内部監査」のレベルで内部監査を行うようにしましょう。


 前述のとおり、会社が持続し、成長性も継続すれば、当然に会社規模、売上高の構成比率、人員構成がどんどん変化します。これに、社会情勢や業界の動向も変化しますので、内部監査の監査項目や「監査の切り口」もどんどん変化します。以前の・過去の経験値はほとんど通用しないかもしれません。そのため内部監査は、常に社内だけでなく社外にも目と気を配り、これらを踏まえて社内の内部監査を行うことが、必要であるとお考えください。

内部監査は常に「IPO後」を見据えて、内部監査業務を行うことが必須です。



当社が提供するサービスとして

当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、

  1. IPO準備中企業の内部監査体制の構築とその業務内容の確立をサポート支援いたします。

  2. 上場企業の内部監査体制の再構築、業務内容の改善をサポート支援いたします。

  3. IPO準備中・上場企業の内部監査業務の業務委託受託先(外部)として業務遂行いたします。(*内部監査責任者として、社内に1名選任をお願いします。)

 この機会に、ぜひ内部監査のあり方、必要性をご理解いただき、内部監査部門の設置/内部監査業務の見直しをご検討ください。

Comments


Commenting has been turned off.
bottom of page