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内部統制に向き合う Part.10 - 業務プロセス⑧ -

執筆者の写真: 長嶋 邦英長嶋 邦英

 2023年04月内部統制報告制度(J-SOX2023改訂版)が15年ぶりに改訂されて内部統制が様変わりし、皆さんの会社では豊富な知識と蓄積された経験をもとに日々内部統制を進化させていることと思います。その知識と経験をいったん振り返って整理し、さらに実践に役立つ戦略・戦術として活かすことを考えてみたいと思います。

 今回も、業務プロセス(以下「PLC」といいます)の続きです。






【参考となる書籍】

情報システム監査実践マニュアル(NPO法人日本システム監査人協会著・森北出版)



【PLC整備評価のポイント】

  1. 各業務を担当している部門・部署の実務担当者への説明

  2. 3点セットのうち業務記述、業務フロー(フローチャート)の再確認

  3. 証憑となる資料の確認

  4. 会計監査人(監査法人)との打合せ/3点セットの内容確認

  5. 各業務を担当している部門・部署への資料提出を依頼するタイミング



【ポイント⑤】部門・部署への資料提出を依頼するタイミング

 業務プロセスに関する記事としては今回で8回目となります。かなり重要なポイントのみで絞っているのですが、評価前の準備段階から整備評価にかけていろいろなポイントがあることに気付かされます。内部統制の評価に携わる皆さんは、そろそろ翌期の内部統制年間計画書を策定される時期だと思いますので、このタイミングで改めて内部統制に向き合うことで計画が立てやすくなると思います。計画では1年間という時間的範囲で、しかも私たちだけでなく相手(監査法人、部門・部署の従業員の皆さん)の都合も考慮して計画を立てなければなりません。このことを踏まえてもうしばらく整備評価について皆さんと一緒に考えてみたいと思っておりますので、お付き合いいただけましたら幸いです。


 相手の都合を考慮して内部統制年間計画を立てるという点で最も重要なのな、部門・部署の従業員の皆さん(以下「従業員」といいます)の業務遂行に支障をきたすことの無いようにすることです。従業員は会社の事業計画に基づき、その計画に従ってそれぞれの業務範囲、担当業務の中で精一杯頑張っていらっしゃいます。その担当業務にはそもそも「内部統制評価担当者への協力」は入っていません。ですから資料提出やヒアリング対応は、内部統制評価者から従業員に対して協力をお願いするものです。協力する側の従業員から見たら、この協力は半ば " 強制的 " と見られているかもしれません。このような見られ方は、協力をお願いする内部統制評価担当者にとっても協力する従業員にとっても最悪な関係であり会社としては最も不幸なかたちです。このようなかたちを払拭するためにも、また普段からギクシャクするような関係にならないように、内部統制評価担当者は最大の努力を払い、従業員に対しては最大の敬意をもって依頼を行うことが大切です。

 内部統制評価担当者は最大の努力と最大の敬意をもって次に考えることは、資料提出を依頼するタイミングです。資料提出期間も大切ですが、これを依頼するタイミング(時期)も大切です。よくパターンとしては2週間くらいに依頼(事前通知)して提出期間に余裕を持たせるというものですが、その2週間は内部統制評価担当者にとっては2週間ですが従業員の皆さんにとっては単なる2週間ではありません。先のとおり従業員は事業計画に従って、それぞれの業務範囲・担当業務の中で精一杯頑張っているのですが、その業務スケジュールにそもそも内部統制評価担当者への協力のための時間は想定されていません。私たち内部統制評価担当者は従業員の業務スケジュールに、わざわざ内部統制評価担当者への協力のための時間を作ってもらうのです。ここにも「敬意」は大切です。皆さんの会社の内部監査規程には、内部監査の実施に際して被監査部門の業務に支障をきたすことの無いように配慮しなければならない旨の定めが必ずあると思います。これは内部統制の評価でも同じです。特に内部統制の運用評価・ロールフォワード監査の時期は会社全体の業務遂行においても繁忙・多忙期にあたります。そのため内部統制年間計画を立てる際は第一に各部門・部署の業務遂行への配慮を考え、資料提出を依頼するタイミングは繁忙・多忙期を外した時期に行なって各部門・部署の従業員の皆さんに準備するための相当の猶予期間を設けることをお勧めします。



PLC整備評価のポイントのおさらい

 PLC整備評価のポイントを皆さんと一緒に考えてみましたが、この5つのポイントに共通している点にお気付きでしょうか。それは「相手を知る」、「相手に敬意を払う」です。

 以前の記事「企業法務の在り方 Part.04 - リスクに合わせた法知識の身に付け方 -」で孫子の言葉「彼れを知りて己れを知れば、百戦して危うからず」を引用しましたが、この言葉は内部統制でも同じことだと思います。私たち内部統制評価担当者は、社内の業務について業務記述・業務フローを作成することで業務内容を把握し理解します。もし把握・理解していなければ、証憑となる資料の確認や会計監査人(監査法人)との打合せで業務記述・業務フローを説明することは不可能です。またその把握・理解が浅い場合も同様に、説明の段階やいざ評価時になって大慌てする事態になります。各業務を担当している部門・部署への資料提出を依頼するタイミングも、社内の業務を把握・理解(=知る)しているからこそできることです。

 また各業務を担当している部門・部署の実務担当者への説明と資料提出を依頼するタイミングは、部門・部署への敬意の度合いが如実に表れます。私たち内部統制評価担当者は部門・部署に協力を仰ぐ立場ですから、説明と依頼の際に使う言葉には最大の敬意を払って依頼することをお勧めします。


 内部統制やJ-SOXのお話しを聞かれるとき、その多くはテクニックに関することに注目しがちです。しかしそのテクニックだけでは、内部統制の評価も内部監査も業務遂行することは難しいでしょう。このような内部統制に改めて向き合うことは内部統制年間計画を立てる時期・タイミングだからこそ考えられることですので、ぜひこのタイミングで検討することをお勧めします。






当社が提供するサービスとして


当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、


  1. IPO準備中企業の内部統制体制の構築とその業務内容の確立をサポート支援いたします。

  2. 上場企業の内部統制体制の再構築、業務内容の改善をサポート支援いたします。

  3. IPO準備中・上場企業の内部統制にかかる業務の業務委託受託先(外部)として業務遂行いたします。(*内部統制責任者として、社内に1名選任をお願いします。)


 この機会に、ぜひ内部統制のあり方、必要性をご理解いただき、内部統制の体制構築/再構築をご検討ください。



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