2023年04月内部統制報告制度(J-SOX2023改訂版)が15年ぶりに改訂されて内部統制が様変わりし、皆さんの会社では豊富な知識と蓄積された経験をもとに日々内部統制を進化させていることと思います。その豊富な知識と蓄積された経験をいったん振り返って整理し、さらに実践に役立つ戦略・戦術として活かすことを考えてみたいと思います。
今回も、業務プロセス(以下「PLC」といいます)の続きです。

【参考となる書籍】
・今から始める・見直す 内部統制の仕組みと実務がわかる本(浅野雅文著・中央経済社)
・情報システム監査実践マニュアル(NPO法人日本システム監査人協会著・森北出版)
【PLC整備評価のポイント】
各業務を担当している部門・部署の実務担当者への説明
3点セットのうち業務記述、業務フロー(フローチャート)の再確認
証憑となる資料の確認
会計監査人(監査法人)との打合せ/3点セットの内容確認
各業務を担当している部門・部署への資料提出を依頼するタイミング
【ポイント④】その1・会計監査人(監査法人)との打合せ
前回の記事「内部統制に向き合う Part.08 - 業務プロセス⑥ -」では、業務記述、業務フロー(フローチャート)の再確認と証憑となる資料の確認について皆さんと一緒にみていきました。業務記述・業務フローの再確認はRCM(リスク・コントロール・マトリックス)及び評価に影響するから、だけではありません。現場での業務の流れが少しでも変更されることで、業務プロセス(PLC)はもとより決算・財務報告プロセス(FCRP)にまで影響することがあります。特に会社・部門・部署において積極的に業務改善が行われている場合は、年に1度だけでなく改善が行われるたびに関係する部門・部署に確認する必要があるかもしれません。また評価の際に必要となる資料(証憑)も並行して確認する必要があると考えます。業務資料は業務改善が行われるときに入力内容・入力方法等が変更されることがありますが、業務改善が行われるときだけではありません。特に多いのがその業務の担当者の変更(入退職、異動等)の時期です。業務改善や業務の担当者の変更があることはもちろんのことですし、業務改善は頻度高めに発生することは会社にとって素晴らしい状況です。ここで重要なのは、そのような状況に、私たち内部統制を担当する皆さんがどのように対処・対応するのか?ということです。変更状況の報告を待つだけでは芳しい業務遂行とは言えません。私たち内部統制を担当する皆さんが自らすすんで部門・部署に出向いてヒアリング等によって状況を把握し、業務記述・業務フローの再確認と再編集に努めるようにすることをお勧めします。
前置きが長くなりましたが、この前置き部分の業務記述、業務フローの再確認と証憑となる資料の確認をしっかり行なったうえでなければ、つぎの「会計監査人(監査法人)との打合せ」のポイントに進むことが難しくなるので、敢えて前置きを長くした次第です。
さて監査法人との打合せですが、ここでは主に3点セットの内容確認をするための打合せを行うための打合せを想定しています。上場会社であれば期初、上場準備期の会社であれば業務記述・業務フローの試作(プロトタイプ)版を作成したのちに開催することをお勧めします。上場会社では「業務記述と業務フローは前期と変更無し」としてこの打合せを省略してしまうことがあるかもしれませんが、これは私の立場から言えば絶対にお勧めしません。省略するケースがあるとすれば余程の大企業でしっかりとしたERP(統合システム)が導入されている会社でしょう。また、営業支援(SFA)・顧客管理(CRM)などの機能を業務の目的に合わせて複数のアプリケーションを組み合わせて使うプラットフォーム型のサービスを利用されている会社の場合、その業務の目的が変わればいつでも他のアプリケーションの新規導入や変更が行われるかもしれません。そのため前段の前置きでお話した業務記述・業務フローの再確認を行ない、変更点について会社の内部統制への影響を確認するためにもこの監査法人との打合せが重要なのです。
【ポイント④】その2・3点セットの内容確認
前段の監査法人との打合せでのアジェンダは、各プロセスのチェックリスト・RCMの確認を行う場となりますが、その確認の場で最も多くの時間を割くのは「3点セットの内容確認」となります。
3点セットの確認では、会社から監査法人に対しての業務記述・業務フローの内容説明が重要です。なぜ重要かというと、評価担当者が各業務の状況等を把握していなければ評価の際に何を評価し、なぜこの評価を行なっているかがわからないまま評価を行いかねないからです。
【評価担当者が把握する各業務の状況等のポイント】※PLC観点
業務プロセス中の各作業工程(誰が何を行なっているか等)の把握
各作業工程の登場人物、担当部門・部署の把握
使用するシステム・アプリケーションは何か。(以下「システム等」といいます)
そのシステム等で何を行なっているのか。
そのシステム等からアウトプットする資料は何か。
そのシステム等にインプットするデータ等は何か。
そのシステム等に連携しているシステム等があるか。
など
※上のポイントはPLC観点から挙げております。 これにIT業務処理統制(ITAC)が加わるとポイントの数が増えます。
上に挙げたポイントを把握したうえで業務記述・業務フローの内容説明となります。3点セットのうちRCMは監査法人の先生方によるチェックを行なっていただくことをお勧めします。
上に挙げたポイントのうちで忘れがちなものは、4と7です。
現場では業務改善を行う中で「業務のしやすさ・便利さへの追求」に目が行きがちです。そうなると、例えば販売管理のために導入したシステム等があるのに、そのシステム等の使いにくさから他のシステム等を別で使用しそのシステム等からアウトプットしたデータ等を元の販売管理システム等にインプットするというようなことが行われている場合、その「他のシステム等」は組織の各業務プロセスにおける目標の達成のために使用している反面、その目標の達成を阻害するリスクがあるかもしれません。それぞれのシステム等でアウトプット/インプットされるデータの正確性や網羅性の検証が必要になることもあります。つまり現場で業務のしやすさ・便利さを追求するために他のシステム等を使用することがPLC、FCRP等に多大な影響を及ぼすことがあるのです。この点はITAC観点でも確認すべきポイントでもありますので、各業務の状況等を把握する際は忘れずに確認してください。またこれらのシステム等が別々なときだけでなく直接連携している場合も同様です。
以上を把握したうえで、監査法人との打合せに臨むことになります。蛇足ですが、打合せの際は説明する言葉だけでなく説明資料も忘れずに。その説明資料はその後の評価で使用する資料(証憑)になるからです。
今回の記事では、監査法人との打合せとその打合せで行う3点セットの内容確認について皆さんと一緒に考えてみました。ここの大切さと大変さは、内部統制の評価担当者としての経験を持つ方であれば皆さん感じていらっしゃるのではないでしょうか。またこの大切さと大変さはIPO準備期の会社だけではなく上場会社でも存在します。ここを疎かにすると私たち評価担当者だけでなく現場の部門・部署の皆さんにも迷惑がかかる等影響がありますので、慎重かつ万全の準備をもって進めることをお勧めします。
当社が提供するサービスとして
当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、
IPO準備中企業の内部統制体制の構築とその業務内容の確立をサポート支援いたします。
上場企業の内部統制体制の再構築、業務内容の改善をサポート支援いたします。
IPO準備中・上場企業の内部統制にかかる業務の業務委託受託先(外部)として業務遂行いたします。(*内部統制責任者として、社内に1名選任をお願いします。)
この機会に、ぜひ内部統制のあり方、必要性をご理解いただき、内部統制の体制構築/再構築をご検討ください。
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