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執筆者の写真長嶋 邦英

内部統制に向き合う Part.05 - 業務プロセス③ -

 2023年04月内部統制報告制度(J-SOX2023改訂版)が15年ぶりに改訂されて内部統制が様変わりし、皆さんの会社では豊富な知識と蓄積された経験をもとに日々内部統制を進化させていることと思います。その豊富な知識と蓄積された経験をいったん振り返って整理し、さらに実践に役立つ戦略・戦術として活かすことを考えてみたいと思います。

 今回も、業務プロセスにかかる内部統制(以下「PLC」といいます)の続きです。






【参考となる書籍】

情報システム監査実践マニュアル(NPO法人日本システム監査人協会著・森北出版)



PLCのカギは評価範囲の選定④

 前回のPLCのカギは評価範囲の選定③に続きます。

 PLCの評価範囲のカギとして以下の2点をご紹介しました。


  1. 「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」の選び方:評価の抜け漏れを防ぐため

  2. PLCで評価すべき統制項目とITACで評価すべき統制項目の選別:評価の重複・抜け漏れを防ぐため


 この2つのカギに共通しているのは「抜け漏れを防ぐ」ことです。皆さんの会社の会計監査人、つまり監査法人の先生方から評価範囲の選定に関して3勘定(=売上・売掛金・棚卸資産)以外の勘定科目も評価範囲に入れるようにご指導があったと思います。これは皆さんご存じのとおり財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する監査基準・実施基準74ページに示されているもに従ったご指導となります。


 売上、売掛金及び棚卸資産の3勘定が考えられる。これはあくまで例示であり、個別の業種、企業の置かれた環境や事業の特性等に応じて適切に判断される必要がある。


 また、国際的な内部統制の枠組みについて、平成25(2013)年5月、米国のCOSO(トレッドウェイ委員会支援組織委員会)の内部統制の基本的枠組みに関する報告書(以下「COSO報告書」という。)が、経済社会の構造変化やリスクの複雑化に伴う内部統制上の課題に対処するために改訂された。  (中略)  我が国でも、コーポレートガバナンス・コード等において、これらの課題に一定の対応は行われているものの、内部統制報告制度ではこれらの点に関する改訂は行われてこなかった。

 皆さんもご存じのとおり、アメリカのSOXではリスクが存在する勘定科目・事業拠点はすべて評価の対象となります。ビジネスを展開するうえでリスクが存在しないことはあり得ませんので、勘定科目、事業拠点ともに評価範囲外となるものは無いと言っても良いでしょう。これについては次回以降で触れたいと考えております。


 さて、前回の記事「内部統制に向き合う Part.04 - 業務プロセス② -」でご紹介しましたが、2023年04月のJ-SOX改訂以前は評価の対象となる「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目」として、売上・売掛金・棚卸資産を挙げていました。そうすると、「3勘定だけを評価すればよい」という誤った理解が多くなり、この3勘定以外の勘定科目において不正行為等が発覚する事態となりました。例えば、適時開示情報閲覧サービス(TDNET)でいわゆる売上原価のうち仕入にかかる勘定科目での不正行為を原因とした内部統制上の不備発覚事案を何度か確認しております。売上であれば循環取引等による水増しがありますが、これは財務諸表監査において発覚するケースが多いです。しかし仕入となると仕入高の調整、例えば利益率を不正に上げる為の仕入額を調整するケースや個別案件間で仕入額を付替えるケースなど、少々幅広くなります。しかもこれが財務諸表監査でも発覚しにくいのは、仕入先も巻き込まれていることが多いことです。(*中には共謀しているケースもありました。)売上の目線だけで監査したとき、仕入先からの見積書、契約書類、納品・検収に関する書類等が揃い一見すると金額等が整合していれば、会計監査人でも不正行為を見抜くことが難しいかもしれません。しかしPLCにおいて販売管理、購買管理等各プロセスの複数目線で評価する " クロス評価(監査) " を実施することで、表面的に体裁を整えている不正行為でも実態を見抜くことが可能です。(※クロス評価(監査)については以前の記事" 発生事実(不祥事) " が発生しない上場会社の内部監査 Part. 06 - クロス監査で抜け漏れ/取りこぼし防止 -」をご参照ください。)



PLCのカギは評価範囲の選定④の続き

 3勘定以外を評価範囲に入れることは、不正行為を漏らさず見逃さないためだけに行うものではないと考えます。なぜなら、そもそもJ-SOXは、会社が内部統制の4つの目的(①業務の有効性及び効率性、②報告の信頼性、③事業活動に関わる法令等の遵守、④資産の保全)を達成しているを合理的に保証するためのものでなので、会社にとってはむしろ自社における内部統制の評価を多面的かつ抜け漏れなく実施して隠すところの無いビジネス(経営・事業)の透明化を促進していることを証明しアピールできれば、企業価値の向上につながります。内部統制は非生産的なことではありません。使い方次第で会社の業績向上・企業価値向上に大きく貢献できるファクター(要素)です。そう考えると、皆さんの会社でも個別の業種、企業の置かれた環境や事業の特性等を十分に検討し、積極的に3勘定以外を評価範囲に入れることをお勧めします。


 内部統制が皆さんの会社の業績向上・企業価値向上に大きく貢献できるファクターであることは、この評価範囲の選定をみてもご納得いただけると思います。でも、これだけではありません。内部統制体制の構築の内容、組織編成、評価対象と評価方法等いろいろなポイントで「内部統制だからできる会社への貢献」がたくさんあります。しかも、これが面白いのですが、内部統制には「コツ」はあっても「正解」が無いことです。業種・業態、企業の置かれた環境や事業の特性が同じ/似た会社があっても内部統制体制を同様にしてよいとは限りません。むしろまったく違っているはずです。他社を参考にすることはあっても真似ることはせず、会社の内部をしっかりと見て会社の内部統制をじっくり検討することをお勧めします。






当社が提供するサービスとして


当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、


  1. IPO準備中企業の内部統制体制の構築とその業務内容の確立をサポート支援いたします。

  2. 上場企業の内部統制体制の再構築、業務内容の改善をサポート支援いたします。

  3. IPO準備中・上場企業の内部統制にかかる業務の業務委託受託先(外部)として業務遂行いたします。(*内部統制責任者として、社内に1名選任をお願いします。)


 この機会に、ぜひ内部統制のあり方、必要性をご理解いただき、内部統制の体制構築/再構築をご検討ください。



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