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内部監査に向き合う Part.10 - 監査方法① -

  • 執筆者の写真: 長嶋 邦英
    長嶋 邦英
  • 4月20日
  • 読了時間: 5分

 内部監査は会社・従業員にとってとても大切な働き・役割です。その働き・役割を遂行するためには、知識と経験と心構えが大切だと思います。それらをいったん振り返って整理し、さらに実践に役立つ戦略・戦術として活かすことを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

 今回は監査方法①です。







監査方法について

 今回から内部監査を行う方法(監査方法)について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

 監査方法とは①被監査部門への質問(ヒアリング)、②関係書類の監査(書面監査)、③実地監査(実査)の3つあることは、皆さんご存知のとおりです。これらに関する説明は内部監査に関する書籍に詳しく書いてありますのでここでいちいち説明することはないのですが、それでもよく「なかなかうまくいかないのだが、どうしたらよいか」というご質問をお受けすることがあります。実際に監査手続や監査報告を拝見したり、ヒアリングにも立ち会うのですが、やり方としてはまったく間違っていないのです。しかし、何か違和感を感じました。そこで内部監査担当者、被監査部門の担当者それぞれにお話しをお伺いしてみると、その違和感が何なのかが判明しました。それは、お互いに表面的なお話ししかしておらず、被監査部門としては「聞かれたから話した」、内部監査担当者としてはアシュアランス/アドバイザリーの元ネタとなる話しを聞くことができていなかった、というものです。内部監査は「組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的」(一般社団法人日本内部監査協会・内部監査基準「第1章 内部監査の本質」より引用)としていますが、先ほどの例では内部監査がなかなかうまくいかない原因にこの目的が達成できていなかったことが考えられます。このようにみると、監査方法は単なる方法論として理解するのではなく、内部監査の目的を達成するために監査方法にもしっかりと向き合い、ひと工夫が必要だとお気付きになるでしょう。



監査方法に向き合う

 監査方法の3つに関する話に移る前に、少しだけ監査方法全体に向き合ってみたいと思います。

 まずは事例を挙げて考えてみましょう。これは私がよく挙げる例なのですが「規程の整備/運用状況」を監査テーマにした場合を考えてみます。すると内部監査経験が豊富な皆さんであれば監査で使う方法として、次のように思いつくでしょう。


  • 規程の整備状況を監査するときは「書面監査」

  • 規程の運用状況を監査するときは「書面監査」と「ヒアリング」


 すでに上場して長い会社であればこれで良いかもしれませんが、上場準備期の会社や上場してすぐの会社の場合は少し物足りないかもしれません。繰り返しますが、内部監査は組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的としています。上場準備期の会社や上場してすぐの会社は規程の新設や改定の頻度が高いため、書面監査だけでその整備状況が良いものであるのか、各規程が経営目標の効果的な達成に役立っているものなのかが分かりずらいと考えます。運用状況についても方法としては書面監査、ヒアリングでよいとしても、その内容等を十分に検討しなければ内部監査の本来の目的を達成することが難しいかもしれません。それに、規程の整備/運用状況という監査テーマには①コンプライアンス、②ガバナンスの2つの要素があるので、これらの要素を踏まえて整備状況を確認するためには、次のように考えられます。


  • 「コンプライアンス」観点で監査するときは「書面監査」と「ヒアリング」

  • 「ガバナンス」観点で監査するときは「書面監査」、「ヒアリング」、必要に応じて「実査」


 特に1つ目の規程の整備状況をコンプライアンス観点で監査する場合、①規程の各条項が法令遵守しているのか、②各条項はどのような経緯でこの定めになったのか、これらを確認する必要があります。大方のケースではこの①だけを確認していると思いますが、特に上場準備期の会社や上場してすぐの会社では各条項の妥当性(組織体の経営目標の効果的な達成に役立つ条文になっているのか?)を確認する必要があります。ネット検索して規程の雛形を入手して流用している、又は専門家等から譲り受けた雛形をそのまま流用しているときは、各規程が会社の経営目標の効果的な達成に役立っていない(現状や経営方針、社風等にフィットしていない)ことが多いです。規程を作成する部門(法務等管理部門)は規程の運用パターンをすべて想定して作成しているわけではありませんし、そもそもすべて想定すること自体非常に困難なことです。ですから上場準備期の会社や上場してすぐの会社では規程(できれば業務マニュアル等に至るまで)のフィットアンドギャップを繰り返して精度を高める必要があります。それを確認するのも内部監査の2つの役割(アシュアランス・アドバイザリー)です。つまり監査手続において監査方法を検討する際は、内部監査の2つの要素と2つの役割と十分理解してその監査テーマの目的をブレることなく達成するための手段(=監査方法)を見極める必要があると考えます。

 内部監査の監査方法は3つだけですが、その3つを器用に使い分けるだけでは内部監査の目的は達成できません。監査テーマの目的を正確に定め、その目的の達成のための段階を決めたうえでその段階に適した監査方法を当てはめていくことをお勧めします。



 今回の記事では、監査方法の概要を皆さんと一緒に考えてみましたが、この監査方法は奥深いです。みなさんの会社でもこれから各監査テーマごとに監査手続を作成すると思いますが、ぜひ参考にしていただけたら幸いです。





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