内部監査に向き合う Part.09 - 監査手続② -
- 長嶋 邦英
- 4月13日
- 読了時間: 6分
内部監査は会社・従業員にとってとても大切な働き・役割です。その働き・役割を遂行するためには、知識と経験と心構えが大切だと思います。それらをいったん振り返って整理し、さらに実践に役立つ戦略・戦術として活かすことを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
今回は監査手続②です。

監査手続に必要なこと③
今回の記事も監査手続について、皆さんと一緒に考えてみたいと思いますが、少々ピンポイントな話題となります。
内部監査の監査手続とは、内部監査担当者が内部監査業務を遂行するために必要な内容をまとめたもの(=監査手続書)となります。この監査手続書については前回の記事「内部監査に向き合う Part.08 - 監査手続① - 」でその例を挙げましたが、この中で2つ少し気をつけていただきたい項目があります。その2つとは「監査実施期間と監査対象期間」、「監査資料」です。
【監査手続書の項目・作成例】
監査テーマ
監査目的
監査実施期間
監査対象期間
監査担当
監査内容
監査方法
監査資料
など
まずは「監査実施期間と監査対象期間」ですが、例えば内部監査において四半期ごとに会計監査を行う場合は、監査対象期間は会社の事業年度に合わせた四半期(1〜3月、など)となり、監査実施期間は経理部門において四半期決算が完了した後(※四半期決算業務中に並行して実施するケースも有り)となります。会計監査ですと監査対象期間は決めやすいのですが、業務監査となると少々難しくなります。
「規程の整備/運用状況」を監査テーマと設定したとき、内部監査の皆さんはその監査対象期間をどのように設定しますか?一番わかりやすいのは1年間(=事業年度)です。そうすると、この監査テーマに関して監査を実施する期間はいつに設定すると良いでしょうか。監査対象期間で設定した事業年度が終了して間も無いタイミングがベストだと思いますが、内部監査の皆さんがその時期にやることと言えば・・・内部統制の評価の最終段階であるロールフォワード評価と決算・財務報告プロセスの期末評価のタイミングです。事業年度を監査対象期間とする際は、監査を実施するタイミングが難しくなります。
ただし、この監査テーマである「規程の整備/運用状況」をどのような観点で監査するかによって、監査を実施するタイミングを事業年度が終了して間も無いタイミングにしなくても良いケースがあります。このケースでは以下のようになります。
【観点別・監査を実施するタイミングの例】
運用状況を重視する観点(ガバナンス観点) → 規程を一定期間(例:年間)遵守していることを監査する場合は監査対象期間の末日から間も無いタイミング。
整備状況を重視する観点(コンプライアンス観点) → 法令改正に伴う規程の見直しや改定等を定期的に行っていることを監査する場合は、04月から2、3か月後のタイミング。
上の1については先ほどご紹介したとおり、監査テーマが規程の運用状況の場合は、会社が健全に経営されるよう監視・統制する仕組み(整備)が順調に運用されているかどうかを確認する(ガバナンス観点)こととなりますので、監査するタイミングとしては会社の事業年度の期末から間も無いタイミングが良いと思います。
一方、2については法令遵守に基づき規程が法令を遵守したかたちとなっているのか。また法令改正に伴って規程も見直しや改定を適宜行っているのかを確認する(コンプライアンス観点)こととなりますので、監査するタイミングとしては例えば労働関連法令の改定・施行日として04月01日が多いので、04月から2、3か月後のタイミングが良いということとなります。
監査実施期間と監査対象期間は、監査テーマや監査の観点によっていろいろなバリエーションが可能です。このバリエーションに少しだけ工夫を加えることによって精度の高い内部監査を行うことができますので、お勧めです。
監査手続に必要なこと④
もうひとつの気をつけていただき項目とは、「監査資料」です。監査資料は、監査手続書を作成するタイミングで判明している資料、監査を実施している最中に追加で提出してもらう資料があります。監査手続書では、「監査資料」の項目にこれらを列記することとなります。ここで私が行っている工夫として、監査手続書にその監査資料の①どこを確認して、②何について確認し、③何の証憑として有効なものなのか、などを書き込めるようにしています。1回監査を実施すると、その監査資料は膨大です。また最近はペーパーレス化のため昔のように監査資料に付箋紙を貼り付けて・・・というようなことはできません。監査報告をまとめる際に、何の資料のどこを・何について確認し、どの監査項目の証憑として採用するのかなどがわからなくなってしまうかもしれません。そのようなことが無いように、監査資料の項目にちょっとした工夫をすることをお勧めします。また最近ではPDFの付箋機能やアンカー機能、リンク機能等もありますので、これらの機能の利用を織り交ぜることも良いかと思います。(※ただし、資料差替え、他の方の利用による上書き等で消えてしまうこともありますので、保護機能もお忘れなく。)
監査手続(書)については少々細かいテクニックもご紹介していますが、これは監査手続がいかに丁寧かつ慎重に作成すべきものであり、取り組み方・向き合い方によって監査手続の内容が大きく変わってしまうために十分な時間を割いて検討しなければならないと考えているからです。以前の記事でもご紹介しましたが、監査を実施しているうちに監査手続を作成した当初の趣旨から外れてしまうことも往々にしてあります。外れることは問題ありませんが、もし外れるなら当初の趣旨の監査をいったん終えて新たに別の趣旨の監査手続を作成したうえで監査を実施するのが良いでしょう。例えば、当初ガバナンス観点で業務遂行状況を監査していたら不正行為を検出したので当該不正行為の実態調査(監査)に切り替わったというケースでは、まずは当初の趣旨の監査報告としては「不適合・不正行為を検出した」とまとめたうえでいったん終了し、改めて当該不正行為に関する調査・監査を実施する前に必ず監査手続を作成する必要があるということです。もしそれぞれの監査手続が曖昧で不完全なものだとしたら、監査に有益な資料を多く入手しても有効な確認・検証ができず宝の持ち腐れです。さらに、同じような監査、ヒアリング等を何度も実施することなったら多くの従業員の皆さんの時間を浪費してしまいます。このようなムダ・ムラを防ぐためにも監査手続(書)は大変重要なものと考えられるのです。
監査手続を作成する際は、ぜひ時間をかけてじっくりと検討・考えて作成することをお勧めします。できればお一人で作成するのではなく、内部監査部門の皆さんで力を合わせて、代表取締役や監査役等のご意見を聞きながら作成するのが一番良いと思います。
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