内部監査は会社・従業員にとってとても大切な働き・役割です。その働き・役割を遂行するためには、知識と経験と心構えが大切だと思います。それらをいったん振り返って整理し、さらに実践に役立つ戦略・戦術として活かすことを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
今回は内部監査計画策定②です。

内部監査計画策定の難しさ②
前回の記事「内部監査に向き合う Part.03 - 内部監査計画策定① - 」でこの内部監査計画策定の難しさを取り上げましたが、今回は少し違った面でこの難しさを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
前回の記事では「例えば、先の計画策定ポイントを踏まえて監査テーマを考えるときと、社内(社長、CFO、監査役等)からの要望を受けたうえで先の計画策定ポイントを踏まえて監査計画を策定するのとでは、その計画内容は大きく変わります。」とご紹介しました。(*計画策定ポイントとは①何を、②どのように、③どの視点で、④どの程度、⑤誰へ報告することを想定して内部監査するのか?です。このの①〜⑤を総じて「計画策定ポイント」といいます)これは、単に内部監査部門だけでこの計画策定ポイントを踏まえて内部監査計画を策定するのと、社内(社長、CFO、監査役等)からの要望を受けたうえで先の計画策定ポイントを踏まえて監査計画を策定するのとでは、大きな差があると考えているからです。そもそも内部監査部門だけでこの計画策定ポイントを踏まえて内部監査計画を策定するのは、芳しくない方法かもしれません。理由は、内部監査部門は他の部門から独立した部門(独立性)ではあるものの、A. 会社組織上では代表取締役社長(又は内部監査担当役員等)の管轄下にあることと、B. 内部統制の観点では監査役等と密に連携することにより監査機能の拡充・強化する役割を担っているからです。もちろん、内部監査部門内で十分な検討をすることは必要ですが、前回の記事で挙げましたように「計画策定ポイントを定めるときに軸となるのは、会社の経営方針と事業計画」です。そうすると、まずはこの経営方針と事業計画の責任者とも言える代表取締役社長の意向を聞くことが必要かつ重要です(=A)。そして会社の監査機能を担う監査役等と内部監査は、それぞれの立ち位置で会社及び業務活動の遂行を監査します(企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(J-SOX)の実施基準47-48ページをご参照ください)。ただ会社及び業務活動の遂行を監査と言っても範囲は広いですから、効率的よく監査を実施し効果的改善を進めるための指摘を行なって、代表取締役社長に改善状況を報告しなければなりません。監査役等と内部監査は監査機能の拡充と強化のためにも、密に連携する必要があります(=B)。
このようにお話ししますととても当たり前だと感じられると思いますが、これが実際にはうまくいっていないとお聞きすることが多いです。
監査役等との連携は内部監査計画から始まる
これは内部監査の皆さんだけでなく監査役等の皆さんにも言えるお話しですが、少なくとも監査役等・内部監査それぞれの監査計画はその検討段階から情報共有すること、できれば意見交換する場や時間を設けることをお勧めします。
理由は、まず監査役等は常日頃から社内にいるわけでもなく社内の従業員の皆さんと親しくお話しをする機会も少ないので、監査の深掘りは難しいでしょう。それにJ-SOXにも「監査役等は、取締役等の職務の執行を監査する」(実施基準47ページ)とありますので、業務の現場にズカズカと立ち入る等のやりすぎに注意する必要が出てきます。そうなると監査役等は必ず内部監査の力が必要となりますので、内部監査との連携は大切です。かたや内部監査は「業務活動の遂行に対して独立した立場から、内部統制の整備及び運用の状況を調査し、その改善事項を報告する」(実施基準48ページ)役割ですので業務活動の遂行状況を細かく監査することができますが、会社の経営という観点から業務活動をみていくためには株主の負託を受けて独立した機関である監査役等の力と助言は大いに必要です。これは私が内部監査・監査役等の両方を経験しているのでお話しできるのですが、いわゆる「三様監査」の実体があり、監査役等と内部監査との連携が密で、監査がきめ細かく実施されている会社に不正行為等の不祥事が発生することはほとんどありません。監査の「目」が社内にいつでもどこでも光っていることは、良い意味でも悪い意味でも業務活動に緊張感を持たせることができるからです。
良い意味で会社・業務活動に緊張感を持たせるには、周到な準備が必要です。単に監視するだけなら難しいことはありんませんが、それでは悪い意味での緊張感を持たせてしまい逆効果です。その周到な準備にはいろいろなアイデアがありますが、アイデアやテクニックに頼るのではなく、年間の監査計画の策定や監査手続等の準備を監査役等と内部監査が連携して行うことをお勧めします。会社の監査機能である監査役等と内部監査の連携は、まずは監査計画から始まるのです。例えばIPO準備期の会社であれば上場審査前までに会社全体を監査する必要があるので、監査役等と内部監査が手分けして広範囲を監査する必要があるでしょう。上場後はピンポイントに集中して業務活動の一部分を監査役等と内部監査の両面から監査することもあるでしょう。これは監査役等と内部監査が密に連携するからこそできることです。
以前の記事「内部監査の在り方 Part. 03 - 内部監査年間計画 - 」で内部監査計画は内部監査の要(かなめ)であるとご紹介しました。そのような大切なものを策定するには、協力者が必要です。内部監査の立場から監査役等を「協力者」と言うのは失礼かもしれませんが、会社の監査機能を担う監査役等と内部監査は企業価値の向上のための協力者として連携することをお勧めします。
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