内部監査は会社・従業員にとってとても大切な働き・役割です。その働き・役割を遂行するためには、知識と経験と心構えが大切だと思います。それらをいったん振り返って整理し、さらに実践に役立つ戦略・戦術として活かすことを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
今回は内部監査計画策定①です。

内部監査計画策定の難しさ
03月が決算期の会社の皆さんにおかれては、もうすでに内部監査計画策定中または策定して監査役会(監査等委員会等)、代表取締役社長に対して内容説明を終えている時期だと思います。特に多店舗展開されている会社では実査(現地監査、臨店による監査)に必要な予算が必要となりますので、会社の予算計画立案のタイミングまでには内部監査計画を策定することとなるでしょう。これについては皆さんの会社の事業形態や規模等によって策定するタイミングが違いますので、もし今回の記事が皆さんの会社にとって遅きに失したときはお許しください。
以前の記事「内部監査の在り方 Part. 03 - 内部監査年間計画 - 」では内部監査年間計画を策定するにあたっての方法論の一部をご紹介しました。内部監査計画は内部監査の要(かなめ)であり、内部監査の皆さんの働きよって、少なくとも会社の企業価値を損なうことがないというアシュアランス(保証)の側面で会社に大きく貢献していることを説明しています。それでは、いったい①何を、②どのように、③どの視点で、④どの程度、⑤誰へ報告することを想定して内部監査するのか?ということを考えたうえで、内部監査計画を立案し策定する必要があるのかを踏まえているでしょうか。(*先の①〜⑤を総じて「計画策定ポイント」といいます)今回を含めて数回に分けて内部監査計画について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
内部監査計画の難しさはどこにあるでしょうか。これは内部監査を長年経験している皆さんでも同じことを毎期繰り返し思っているでしょう。例えば、先の計画策定ポイントを踏まえて監査テーマを考えるときと、社内(社長、CFO、監査役等)からの要望を受けたうえで先の計画策定ポイントを踏まえて監査計画を策定するのとでは、その計画内容は大きく変わります。また一例として継続的モニタリング対象としている「労務管理状況(時間外労働がメイン)」を監査テーマにするとしても、計画策定ポイントのそれぞれのうち一つが代われば、監査手続の内容が大きく変わります。良い点としてはこの計画策定ポイントをうまく駆使して毎期変化のある監査を実施することができますが、悪い点としては計画策定ポイントが曖昧なままだと目的が定まらない・焦点が朧げな監査となる危険があります。計画策定ポイントをしっかり定めないと、筋道が立たない・支離滅裂な内部監査計画になってしまうおそれがあると思います。ここに内部監査計画策定の難しさがあると考えます。
内部監査計画策定ポイントを考えるときの軸
計画策定ポイントを定めるときに軸となるのは、会社の経営方針と事業計画です。
この事業計画はできれば中期計画も含めて考えてみると良いかと思います。繰り返しますが、内部監査は業務の「間違い探し/粗探し」ではなく、業務のチェック機能が正しく整備され運用されているかを確認(監査)し評価するアシュアランス(保証)業務です。もちろん内部監査の中で各業務での不正行為・不祥事を検出すれば指摘して改善を促しますが、一般的に会社で不正行為・不祥事の調査にあたるのはリスク管理委員会やコンプライアンス委員会等であり内部監査が能動的に調査にあたることは無いものと考えます(*社長等からの特命監査を除く)。ですから毎期の内部監査年間計画は、まず業務のチェック機能が正しく整備され運用されているかを確認し評価することを大きな目的とし、会社の経営方針と事業計画から読み取れるリスク等を対象として監査を行うことを目的に挙げるかたちにすることをお勧めします。これによって計画策定ポイント(①何を、②どのように、③どの視点で、④どの程度、⑤誰へ報告すること)を検討して明確に定めることが可能です。ここまで行えば、監査テーマを検討して挙げるときに迷ったり、監査テーマが多すぎる/深掘りすぎるというような「風呂敷を広げすぎた内部監査計画」を策定してしまうことが少なくなると思います。
この「内部監査に向き合う」シリーズの記事では、「内部監査の在り方」シリーズで具体的な方法論やアイデアをご紹介しているのとは違い、少々抽象的で精神論に近い内容になっているかもしれません。しかし実際に内部監査の業務に携わる皆さんはご存知のように、なぜ内部監査が必要なのか?なぜ内部監査計画を綿密に策定しなければならないのか?なぜ内部監査実施前には監査手続を策定しなければならないのか?など、いわゆるそもそも的なポイントを押さえて理解していないと会社はステークホルダーに対する社会的責任(CSR)を果たしていくことが難しいと思います。
このようなわけで、しばらくこの「内部監査に向き合う」と「内部統制に向き合う」シリーズを続けて、皆さんと一緒に内部監査・内部統制に向き合ってみたいと思います。
当社が提供するサービスとして
当社が提供する「内部統制・内部監査体制構築」サービスでは、
IPO準備中企業の内部統制体制の構築とその業務内容の確立をサポート支援いたします。
上場企業の内部統制体制の再構築、業務内容の改善をサポート支援いたします。
IPO準備中・上場企業の内部統制にかかる業務の業務委託受託先(外部)として業務遂行いたします。(*内部統制責任者として、社内に1名選任をお願いします。)
この機会に、ぜひ内部統制のあり方、必要性をご理解いただき、内部統制の体制構築/再構築をご検討ください。
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