企業法務の業務範囲はとても広いです。専門性の高い業務や、幅広い知識と深めの経験値を求められる業務など様々です。そのような状況の中で、企業法務の皆さんは会社、役員、部門・部署、従業員の方々からの要請・依頼に十分に応えられるかどうか。いろいろな角度を通して、皆さんの会社それぞれの企業法務の在り方を確認してみましょう。
M&Aと企業法務
皆さんの会社でM&Aを進めようとするとき、そのメンバーに法務の方はいらっしゃるでしょうか。大半は会社の顧問弁護士先生やM&Aの見識の高い弁護士事務所等にM&A業務を委託するので会社の法務の方は外れてしまうことが多いかもしれません。M&Aは専門性を問われる部分が多いので、会社としては顧問弁護士先生やM&Aの見識の高い弁護士事務所等に委託することでM&Aに伴うリスクを低減することはとても大切です。ただし、その顧問弁護士先生やM&Aの見識の高い弁護士事務所等はあくまでM&A先を外部の立場として捉えますので、例えばM&A先へのデューデリジェンス(以下「DD」といいます)やM&A先等への法的手続きや交渉等を進める際にはとても心強い味方になっていただけますが、会社の立場に立ってM&A先の企業価値が皆さんの会社が求めているものなのか、会社の今後の企業価値向上に有益なのか、皆さんの会社に対して積極的に寄り添ってもらうかたちを期待するのは難しいかもしれません。皆さんの会社に寄り添うかたちというと、社内リスクについてよく把握し理解している方は社内にいらっしゃいますか?経営リスクについては経営層の皆さんが把握し理解していると思いますが、特に事業リスクや業務に関するリスクを全社的に把握し理解している部門といえば、おそらく真っ先に法務の皆さんのことを思いつくのではないでしょうか。
M&Aいろいろ
話は少しそれますが、M&Aは会社が成長していく過程で外せない選択肢になりつつあります(先般の記事「IPO準備/上場会社でひと工夫 Part.14 - M&A -」をご参照ください)が、これはM&Aする側としてだけではありません。会社が成長していく過程には「M&Aされる側」という選択肢もあります。M&Aされる側と聞くと悪いイメージが先行するかもしれませんが、良いイメージ、つまり積極的意味でのM&Aもあります。
消極的なM&A
資金繰り悪化や大きな不祥事発覚するなど経営の継続困難の理由でM&Aされる側となる。
積極的なM&A 一段階上のステップに上がるために大手企業傘下入りや資本提携など今後飛躍するためにM&Aされる側となる。
積極的のM&Aの中でも特に資本提携は一般的なM&Aとは、出資割合が3分の1を境にして別なものと区別されることが多いです。ただ資本提携もM&Aも、資本投下する相手先に対しての向き合い方ややることに大きな違いは無いと考えます。資本提携の際にもDDを行いますし、資本提携もM&Aも決議する機関や議決権割合等ケースによって違いますが、社内で決裁・議決が必要となることに変わりはありません。社内でこれらを十分に理解して手続準備等を進めることができるのは、社内では法務が適任でしょう。逆に、これらを十分に理解して手続準備等を進めることができる担当者が社内にいないと、のちに大きな問題を抱えることとなります。例えば、クロージングに至るまでの間に手続きの不備が発覚した場合は、破談という最悪の結末をみることになります。この破談の結末をみた後に、さらに追い打ちをかけて不測の事態が発生することもあるようです。このあたりはM&Aの見識の高い弁護士事務所やM&Aに特化したコンサルティング会社等にご確認ください。
企業法務のM&Aへの携わり方
法務の皆さんがM&Aのメンバーとして携わるときに注意していただく場面は、検討に入る際のDDとクロージングに至るまでの間の社内の事務手続き全般がメインとなります。 DDを実際に行うのはM&A外部委託先(顧問弁護士、M&Aの見識の高い弁護士事務所、M&Aコンサルティング会社など)となりますが、M&Aする側としてこのDDで特に留意してもらいたいポイントを社内で十分に検討し取りまとめてM&A外部委託先に通知・共有すること。これができるかできないかがDDの決定的なポイントです。もちろんM&A外部委託先は専門性をフルに活かして懇切丁寧な調査を行い、しっかりとした内容のDD報告書を提出するでしょう。ただ、そのDD報告書の中に、M&Aする側が本当に欲しい情報が入っているとは限りません。これはM&A外部委託先のミスではなく、むしろM&Aする側が本当に欲しい情報や重点的に調査して欲しいポイント等の意図をM&A外部委託先に通知・共有又は協議を行なっていなかったことが原因と考えられます。前回の記事「" 発生事実(不祥事/不正行為) " が発生しない上場会社の内部監査 Part. 17 - M&A -」で取り上げました直近事例は、この原因により隠れたリスクを見つけられなかったためにM&A後に不祥事が発覚した事例です。
法務は普段の業務において顧問弁護士等と協議することに慣れているでしょう。このあたりは法務の皆さんのこれまでのご経験等を踏まえてM&Aメンバーに入れるかどうかをご判断ください。
法務の皆さんが社内の事務手続き全般に携わるときは、M&Aに関する基本的な知識を持ったうえでM&A外部委託先、社内の部門・部署と連携し、社内的に必要な事務手続き(稟議、取締役会等決議事項の整理など)の対応にあたることをお勧めします。理由は、M&Aの流れの中で同時に又は並行して進める必要のある事務手続き等があり、このときM&Aに関する基本的な知識を持っていなければ、この同時に又は並行して進める必要のある事務手続き等を粛々と進めることが難しいと考えられるからです。M&A外部委託先は手取り足取り指導してくれるわけではありませんので、M&Aに関する基本的な知識を持ったうえでこれに携わることが重要です。社内的に必要な事務手続きを行ううえで必要なM&Aに関する基本的な知識は法務の皆さんに理解しやすい内容と思いますので、しっかりとM&Aに関する基本的な知識を身につけて業務にあたることをお勧めします。
ネットで検索していただくとお分かりいただけると思いますが、M&Aの失敗例はかなり多いです。しかもM&A失敗だけに止まらず、その失敗が原因でM&Aする側/M&Aされる側それぞれに経営的な危機に陥ってしまうケースもあります。会社にとって企業価値の向上につながる発展的な事業ですから、大きな選択と決断を迫られそれに伴うリスクもあります。このような会社の大きな選択と決断に、法務の皆さんの実直な業務遂行力が必要となるでしょう。そのためにも法務の皆さんは、契約法務等一般的に考えられる法務業務の知識や経験だけでなく、会社の事業推進、企業価値の向上に大いに貢献できるよう幅広い知識と経験を積んでいただくことをお勧めします。
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